1.傍聴はカラダに悪い

 「走りながら考える」と未完成な形で始まった介護保険が、介護保険法改正、介護報酬改定のたびに後ろ向きに走り去っていく。

 

 前回の介護報酬改定から、社会保障審議会介護給付費分科会の傍聴を続けている。
 小さなNPO介護事業所を運営し、要介護高齢者の現実に取り巻かれている身には、一つひとつの改定がこたえる。
 NPO立ち上げ時に、最初の介護報酬をもとに計算した収支見込みは、その後2回のマイナス改定で大幅に狂った。
 借金の返済は遅れ、悲しいほど安い給料をスタッフにはらっていくことさえやっとになり、深夜目覚めてはパチパチ頭の中の電卓叩き、不安に陥っていたのも、ここで決められた結果なんだ、と気がついたからだ。

 

 仕事の合間を縫って傍聴してみると、びっくりするほど現実から遠い話がされていた。
 高齢者介護の現場なんて見たことがあるのだろうか。
 家族介護者がどんな状況なのかわかっているのだろうか。
 介護保険開始当時に増えた介護福祉士の専門学校がつぶれる理由を知っているのだろうか。
 有資格者が介護現場から離れなければならない理由を調べたことがあるのだろうか。
 国会なみに中継があっても、こんな発言をするのだろうか。

 

 たとえば、「学識経験者」の委員の発言は毎度スゴイ。
 昨年も押し詰まった12月24日、クリスマス・イブの分科会では、全国の介護職に素晴らしい発言をプレゼントして下さった。
 3度目の2009年度、やっとプラス改定になった介護報酬と、別枠で支給されている介護職員処遇改善交付金合わせて、ようやく1万6000円ほどのアップになった介護職の給与のこと。
 アップしたって、全産業平均より1ヶ月当たりざっと10万円も低く、25万円程度だ。
 それを、イタリアを例に上げ、「かの国の介護職は常勤で1千ユーロ、調査当時で13万円、今のレートなら11万円少しである。大卒初任給は18~19万円。
 いったい、どこまで上げればよいのか」とおっしゃる。この委員のもともとの出身は労働団体だというからびっくり。こんなこと、選挙を控えている国会議員なら人前では絶対、言わないだろう。

 

 こんな発言ばかりではないにしろ、傍聴はからだに悪い。
 胃がキリキリ、血圧も上がる。
 でも、自分のNPOの経営だって充分にスリリングなのに、それでも何をおいても出かけようと思う。
 こんな議論で介護報酬を決められたらたまったものではないのだから。
 とはいえ、出かけて聞いて憤慨するばかりでは芸がない。

 というわけで、傍聴記を書こうと思い立ったのだ。
 さて、次回は!?(おり~ぶ・おいる)


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