フィオーナ(ジュリー・クリスティ)とグラント(ゴードン・ピンセント)は
結婚生活44年目。
湖のほとりに住み、一緒にクロスカントリーに出かけ、
家事をし、読書するのを日課とする、仲むつまじい知的カップル。
しかし、穏やかな暮らしは、
フィオーナがフライパンを冷蔵庫にしまうなど
初期認知症の傾向が現れて、急変する。
凍てつく冬の夜をさまよう妻をグラントは必死で探す。
そして、事態を冷静に理解したフィオーナは、
みずから介護施設に入る決心をする。
本人が慣れるまで面会を1カ月間、我慢した言われたグラントが
訪ねてみると、フィオーナは彼を夫とは認めず、
車いすの入居者・オーブリー(マイケル・マーフィー)を
「初恋の相手」だと恥ずかしげに打ち明けた。
驚き、困惑するグラントは、介護スタッフから説明を聞き、
妻の変化を受け容れようと日参する。
だが、入居費用の負担に耐えられなくなった
オーブリーの妻・マリアン(オリンピア・デュカキス)は、
夫を自宅に連れ帰ってしまった。
動揺激しく、衰弱するフィオーナをみかねたグラントは、
ある決意を抱いてオーブリー夫妻の家を訪ねる…。
静謐な自然を背景に、病んだ人もそうでない人も
孤独から逃れようと必死に生きていることを教えてくれる作品。
原作はカナダの「短篇の女王」、
アリス・マンローの『クマが山を越えてきた』(新潮社『イラクサ』収録)で、
映画とひと味違う細やかなニュアンスが楽しめる。
(サラ・ポーリー監督/2006年/カナダ/110分/CCRE)
CF016 『アウェイ・フロム・ハー』 Away from Her
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