マルタ(シュテファニー・グラーザー)は80歳。
夫を亡くして8ヵ月。
すっかり落ち込んで、教会の礼拝に出る気力もない。
いつもマルタと手作りケーキを楽しみ、
カードゲームに興じるリージ、フリーダ、ハンニの3人がなぐさめるが、
夫が残した雑貨店を切り盛りするのもおっくうな日々。
舞台はスイス、エメンタール地方。
あざやかな緑の牧草地に囲まれた村が美しい。
スイスアルプスといえば民謡ヨーデル。
マルタの村にも男性合唱団がある。
町で開かれるコンテストを目前に、大切な団旗がネズミにかじられた。
リージたちは裁縫が得意なマルタに修理するよう仕向け、
みんなで首都ベルンの布地店に材料を買いに出かける。
久しぶりに布地やレースに触れたマルタは、
かつて刺繍が得意で、ランジェリーを作っていた
結婚前の自分を思い出す(夫の命令で村人には秘密だった)。
シングルマザーで派手好きのリージはマルタの昔の作品を褒め、
雑貨店を改装し、ランジェリーショップにしようとけしかける。
しかし、村は保守的でお堅いプロテスタントの地。
おまけに、マルタの息子は教会の牧師。
夫の介護に苦労しているハンニは口をきかなくなり、
老人ホームにうんざりしているフリーダも敬遠気味。
だが、リージはマルタを励まし続け、
勇気を得たマルタは50年前の夢を実現すべく
ランジェリーショップをオープンする。
「なんていやらしい」、「伝統に対する冒涜だ」と村人の反応は散々。
だが、マルタ擁護にまわったフリーダが
老人ホームで習ったネットショッピングに出品すると、
伝統的刺繍をあしらったランジェリーに全国から注文が殺到…。
どこの国にも女らしさの強要があり、
高齢者のちょっとセクシーな「生きる喜び」は周囲につぶされがち。
80歳にして自立に目覚めるマルタの姿が愛らしい。
(ベティナ・オベルリ監督/2006年/スイス/89分/CCRE)
CF018 『マルタのやさしい刺繍』 DIE HERBSTZEITLOSEN
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