CF018 『マルタのやさしい刺繍』 DIE HERBSTZEITLOSEN

マルタ(シュテファニー・グラーザー)は80歳。
夫を亡くして8ヵ月。
すっかり落ち込んで、教会の礼拝に出る気力もない。
いつもマルタと手作りケーキを楽しみ、
カードゲームに興じるリージ、フリーダ、ハンニの3人がなぐさめるが、
夫が残した雑貨店を切り盛りするのもおっくうな日々。
舞台はスイス、エメンタール地方。
あざやかな緑の牧草地に囲まれた村が美しい。
スイスアルプスといえば民謡ヨーデル。
マルタの村にも男性合唱団がある。
町で開かれるコンテストを目前に、大切な団旗がネズミにかじられた。
リージたちは裁縫が得意なマルタに修理するよう仕向け、
みんなで首都ベルンの布地店に材料を買いに出かける。
久しぶりに布地やレースに触れたマルタは、
かつて刺繍が得意で、ランジェリーを作っていた
結婚前の自分を思い出す(夫の命令で村人には秘密だった)。
シングルマザーで派手好きのリージはマルタの昔の作品を褒め、
雑貨店を改装し、ランジェリーショップにしようとけしかける。
しかし、村は保守的でお堅いプロテスタントの地。
おまけに、マルタの息子は教会の牧師。
夫の介護に苦労しているハンニは口をきかなくなり、
老人ホームにうんざりしているフリーダも敬遠気味。
だが、リージはマルタを励まし続け、
勇気を得たマルタは50年前の夢を実現すべく
ランジェリーショップをオープンする。
「なんていやらしい」、「伝統に対する冒涜だ」と村人の反応は散々。
だが、マルタ擁護にまわったフリーダが
老人ホームで習ったネットショッピングに出品すると、
伝統的刺繍をあしらったランジェリーに全国から注文が殺到…。
どこの国にも女らしさの強要があり、
高齢者のちょっとセクシーな「生きる喜び」は周囲につぶされがち。
80歳にして自立に目覚めるマルタの姿が愛らしい。
(ベティナ・オベルリ監督/2006年/スイス/89分/CCRE)


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