CF019 『ハリーとトント』 Harry & Tonto

アメリカのリア王

72歳のハリー(アート・カーニー)は、元高校教師の年金生活者。
妻に先立たれ、猫のトントとアパート暮らし。
トントをリードにつなぎ、一緒にニューヨークの下町を歩けば、ベンチには友だちがいて、雑貨屋のおやじとは軽い下ネタが楽しめる。
しかし、愛着のあるレンガ造りのアパートは、取り壊されることになった。
「年寄りが家をなくせば、ただの放浪者だ」、「リア王と一緒だ」とつぶやくハリーだが、郊外に暮らす息子の家にしぶしぶ身を寄せる。
だが、息子一家との暮らしは気づまりなことおびただしい。
シカゴに暮らす娘を訪ねようと考えたハリーは、中古車でシカゴをめざす。
途中、初恋の女性・ジェシーが住む町に寄るが、50年ぶりに会った彼女は高齢者施設にいて、ハリーのこともよくわからなかった。
シカゴで書店を経営する娘のシャーリー(エレン・バースティン)とはお互いに深い愛情を確かめあったが、会えば口論になる相手。
とても同居はできない。
ロスアンゼルスに住むもうひとりの息子・エディーに会うべく、
ハリーは結婚前のあこがれだった北米大陸横断ドライブに出る。
老カウボーイや高級娼婦と出会い、
ラスベガスで酔っ払いながらたどり着いた西海岸。
仕事に失敗し、妻に去られていたエディーは同居を望むが、ハリーは「自分で立ち直れ」と励まし、トントとともに立ち去る…。
1975年の日本公開時には「老人映画」と呼ばれ、高い評価を得た名作だ。
高齢者を正面から捉えた作品がないのが不満だったという監督によれば当時、「父親の映画は見たくない」と映画会社に断られ続けたという。
(ポール・マザースキー監督/1974年/アメリカ/116分/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン)

投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ: