重症心身障害児施設「びわこ学園」は1963年に開園し、医療機関(病院)と福祉施設(社会福祉法人)という「医療と生活の両方の機能を兼ね備えている」施設だ。
小児科医の著者は、1966年に「第一びわこ学園」を初めて訪ね、身体的には「ねたきり」状態で、精神発達遅滞(知的障害)も重い子どもたちと出会った。1977年には常勤医となり、「超重度障害児」と呼ばれる子どもたちも受け入れる。
本書では、「存在そのものが『苦痛』」であるような子どもたちを「快適な存在」にすることを目標とした日々の取組みが、子どもたちの事例を通しておだやかに語られる。
重症心身障害児へのとりくみは、心身機能の改善もあるが、基本的には「生命体の維持」と本人が「気持ちがよい」状態にあるため、にあるという。また、医療処置や介護は、「(ケア)する人」と「(ケア)される人」の協力関係があってこそ、成り立つという。
秋津療育園(1959年開園)、島田療育園(1961年開園、現・島田療育センター)から「びわこ学園」につながる戦後の重症心身障害児施設の歴史も紹介。
「生きているのはかわいそうだ」ではなく、「生きている喜びがある」状態を実現することが人間社会のありようではないかと問う。
(高谷清著/岩波新書/735円)
BF062 『重い障害を生きるということ』
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