CF029 『カッコーの巣の上で』 One flew over the cuckoo’s nest

「支援」と「支配」のあいだ
精神病院が舞台の『カッコーの巣の上で』は、「管理社会の恐怖」を描いた傑作として知られ、原作となった同名小説は当時、ヒッピー・コミューンのリーダーとして知られたケン・キージーのミリオンセラー。
1963年のある日、刑務所の強制労働を逃れるため、精神疾患を装ったランドル・P・マクマーフィー(ジャック・ニコルソン)がオレゴン州立精神病院に移送されて来た。
医師たちは彼を観察するため、病棟に受け入れる。
そこでは、看護師長・ラチェッド(ルイーズ・フレッチャー)のもとで、グループ・ディスカッションによる治療が行われていた。
マクマーフィーは患者たちがラチェッドを恐れ、無気力であることに気づく。
院長に優秀な治療者と認められているラチェッドは、ワールド・シリーズのテレビ中継を観ようと提案し、患者たちを海釣りに連れ出すマクマーフィーを苦々しく眺めていた。
粗野で陽気なマクマーフィーは、看護士とのトラブルで電気ショック療法を受けるはめになってもくじけない。
だが、ある日、ディスカッションに参加している患者たちは自発的入院者で、いつでも退院できるが、自分は病院が許可しない限り出られないことを知る。
初めて恐怖を覚えた彼は、脱走を画策し、病棟仲間とお別れパーティーを繰り広げるが…。
患者の人間性まで支配する看護師長と自由にふるまうニセ患者の攻防は、後者がロボトミー手術(脳の前頭葉を切り離す手術)で文字通り廃人にさせられる悲劇で終わる。
唯一の救いは、マクマーフィーと行動を共にするつもりだった患者仲間のチーフ(ウィル・サンプソン)が、脱走に成功したことだ。
英語の「カッコーの巣」は精神病院も意味するそうだが、カッコーは他の鳥の巣に卵を産む「託卵」の習性がある。
あるはずのない棲みか、正常と異常のあいまいさ、治療という「支援」にくるまれた「支配」など提起されるテーマは35年以上たっても色褪せない。
第48回アカデミー賞主演女優賞に輝いたルイーズ・フレッチャーが授賞式で、両親が聴覚障害者であることを明かし、手話を交えてあいさつしたのも記憶に残っている。
(ミロシュ・フォアマン監督/1975年/アメリカ/133分)

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