BF070 『介護と裁判 よりよい施設ケアのために』

著者は母親がショートステイ利用中に転倒し寝たきりになり、亡くなったという体験をきっかけに、介護事故の裁判などを取材し『介護が裁かれるとき』(岩波書店、2007年)をまとめた。
矛盾に満ちた介護保険制度の改善を願う労作だったが、以後も介護事故は増え続け、2002年1月に刊行した本書では「介護多難時代」を予測する。
介護事故トラブルや裁判について紹介する15ケースの多くは、介護保険制度の「貧困」が生んだヒューマンエラー(人為的なミス)だ。
介護保険はケアを受ける側・する側の自己責任にまかされた「契約」制度で、行政や司法の関与が弱体化している。
あくまでも利用者や家族の立場にたち、介護職の内部告発へのバッシングや、沈黙する家族の事情など多面的な問題に深く切り込む。
深刻な事例に満ちているが、介護職員による虐待や事故・苦情報告をそのまま公表している「きわめてまれな」施設なども紹介。
介護保険制度はニーズをきまりに合わせる適応主義ではなく、QОL(生活の質・生命の質)優先に発想を転換すべきだと指摘する。
(横田一著/岩波書店/1785円)

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