知的でシニカルな老後
エセル(キャサリン・ヘプバーン)とノーマン(ヘンリー・フォンダ)の夫婦は、ニューイングランドにある広大な湖のほとりの別荘にやってくる。
水鳥の声にはしゃぐエセルだが、ノーマンは「何も聞こえん」とつれない。
きっと耳が遠くなっている。
大学教授だったノーマンは気難しい毒舌家だが、エセルは夫のやさしい内面を知っている。
しかし、ひとり娘のチェルシー(ジェーン・フォンダ)は、中年になっても抑圧された子ども時代の傷を抱えたままだった。
ノーマンの80歳の誕生日を前に、長年寄りつかなかったチェルシーが恋人とその息子・ビリーと一緒に別荘にたずねてきた。
相変わらず皮肉たっぷりの父親に、チェルシーは「人生に勝ちたいんでしょ」と敵意をむきだす。
エセルは「過去の不満ばかり言って何になるの。人生を無駄にしないで」と娘をなだめる。
チェルシーと恋人はヨーロッパ旅行に行くため、ビリーを別荘に預けていった。
カリフォルニア育ちの13歳の少年は、「年寄りってどんな感じ?」と生意気盛り。
ノーマンは、両親が離婚したビリーの寂しさを思いやり、ぶっきらぼうにマス釣りに誘う。
しぶしぶ同行したビリーだが、すぐ夢中に。
調子に乗ったふたりは危険な岩場でボートを座礁させるなど、エセルに叱られながら楽しいひと夏を過ごすことになった。
帰国したチェルシーは、ノーマンとビリーの仲の良さを見て「男の子ならよかったのね」とすねる。
揚句に「世界一ひどい父親だわ」と言ってしまい、「その世界一ひどい父親は、私の夫よ!」とエセルに頬をひっぱたかれてしまった…。
本作はジェーン・フォンダが不仲の実父、ヘンリー・フォンダ(1905~1982)のために企画した作品という。
ヘンリー・フォンダはアカデミー主演男優賞を得て、数ヶ月後に亡くなった。
舞台裏でも父娘の和解が話題となった作品だが、キャサリン・ヘプバーン(1907~2003)とヘンリー・フォンダというアメリカの名優たちの知的でシニカルな夫婦の会話が楽しめる。
(マーク・ライデル監督/1981年/アメリカ/110分)
