BF090 『ナース裏物語 白衣の天使たちのホンネ』

「患者さんに接する時間が取れない」
これからは在宅医療の時代だそうで、訪問看護師の需要が高まっているが、現場は一体どうなっているのだろう。
本書は病院に勤務する看護師が書いた現場エッセイ。
2006年度の診療報酬改定で、入院患者に対する看護師の比率に「7対1」(7ペッドに看護師1人)が新設され、これまで以上の診療報酬がもらえることになった。でも、看護師を1.4倍に増やさなければならないので、看護師は慢性的に不足。とはいえ、「そりゃあもう、突発的に辞める人は辞めるからです。それだけの話です」。
看護師の仕事は、勤務開始時間の大体1時間くらい前に出勤。申し送りをすませ、食事の準備、バイタルチェック、点滴や注射、薬の準備…それ以外に医療安全委員会など病院内のさまざまな「委員会」の仕事、そして「研修」に時間と労力が取られ、どうしてもストレスがたまりがちになる。
もちろん”トンデモナース”というのもいて、入院患者に痰の吸引をしなかった看護師は「辞めたいと思っていたから、問題を起こせば辞められると思った」という怖い話もある。
でも、辛いのは「思うように患者さんに接する時間が取れないとき」。また、人間関係がうまくいかないとき。
充実感があるのは、医師や師長、同僚たちと一緒に頑張って働いているという気分を味わうとき。そして、それに見合うお給料がもらえたとき。
「清拭や剃毛、浣腸や摘便も照れずにできるのが”1人前のナース”」で、”患者の微妙な関係”やセクハラなど性的イメージの誤解もきっぱり解く。
介護職との共通項も多々あるが、「”医師とナースは対等”なんてきれい事」といった本音は、「医療と介護の連携」の流れのなかで要注意事項かも知れない。
(中野有紀子著/文春文庫/630円)

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