CF054 『毎日がアルツハイマー』 EVERYDAY IS ALZHEIMER’S

母の本当の心に触れる介護生活
オーストラリアで、映像作家として活躍していた関口監督。
ある日、日本の妹から、母・ひろこさんがチェーンをかけて家に立てこもっていると連絡が来た。
父亡き後、ひろこさんはひとり暮らし。
監督は悩んだ末、「母と一緒に暮らそう」と決意。
小学生の息子を離婚した夫に託し、33年ぶりに帰国した。
監督はひろこさんとの日常をカメラで追い、ユーチューブに日記として公開。
本作では、79歳から81歳の誕生日までの2年間を長編ドキュメントにまとめた。
大好きだった花見に出るのも嫌がるひろこさん。
ようやく連れて行った脳神経外科で、認知症と診断された。
だが、本人は「自分をよく知っているのは自分だ」ときっぱり否定。
トイレットペーパーが急激に減るのは手製パッドを作るせいかと問えば、「監視してるわけ? 面倒みるのが不安なら、出てって。それほどボケてないから」と攻撃的。
地域包括支援センターに相談した結果は、要介護3。
専門家を訪ねた監督は、アルツハイマー型認知症について、「物忘れや判断力の低下は、脳の働きが5%くらい悪くなっているから」で、「失敗してイライラするなど感情の起伏は、正常な働き」、「瞬間は正常だが、継続しない」ことを納得する。
年末、シドニーから監督の息子がやってきた。
夜になると脳が活性化するひろこさんと夜更かし好きの孫は意気投合。
楽しく過ごすが、お父さんが迎えに来た…。
お父さんは息子に「日本にいてもいいよ」と言ってくれたが、少年は悩む。
監督がひろこさんに相談すると、厳しい表情で「ここにいるのがいいに決まってる」と即答された…。
ひろこさんは働き者で「良妻賢母を絵に描いたような人」だったが、認知症になり、「やりたいことをやり、言いたいことを言う」ようになった。
監督は母の本心に触れた気がして嬉しかったという。
誕生日パーティーも東日本大震災も翌日には忘れ、貯金通帳も出てこないけれど、ひろこさんと監督の「感情豊かな介護生活」はまだまだ続く。
(関口祐加監督/2012年/日本/93分)

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