お金持ち障害者と「同情しない」失業者の出会い
フィリップはパリ中心部に邸宅を構える大富豪の中年紳士で、クラシックと美術が趣味。
ドリスは郊外の低所得者向け団地に大家族で暮らすアフリカ系の若者で、ソウル・ミュージックとマリファナがお気に入り。
対極的なふたりは、フィリップの介護人募集の面接で出会う。
フィリップはパラグライダー事故で脊椎損傷を負い、首から下が完全にマヒしている。
今の医学と資産で70歳まで生きると保証された彼は、気難しい中途障害者。これまでの介護人は、1週間ともたなかった。
一方のドリスは、失業保険をもらうため、就職活動をしたという証明書がほしいだけ。「さっさと書類にサインしてよ」とフィリップにはまったく興味を示さない。
誠実で退屈な介護のプロに飽きていたフィリップは、素地まるだしのドリスに興味を抱き、1か月の試用期間で採用する。
豪邸に住みこみという条件に惹かれたドリスは、実地介助に悪戦苦闘。
だが、外出用ワゴン車を「荷物扱いするのはイヤだ」と嫌い、高級スポーツカーの助手席にフィリップを乗せて突っ走る。
文通相手がいると聞けば「電話しなくちゃ」とけしかけ、抵抗するフィリップにかまわずデートの段取りをする。
乱暴で前科持ちのドリスに気をつけろと友人に忠告されたフィリップは、「彼は私に同情しないのがいいんだ」ときっぱり宣言。
知的で落ち着いたフィリップと野性的で快活なドリスだが、どちらも社会的には”アンタッチャブル”(原題)。ふたりが互いを認めあう過程が、コミカルかつシニカルで楽しい。
ある日、ドリスの弟が悪事に手を出し、傷ついてやって来た。
フィリップは「これだけ働けば失業手当が出る。もう、やめにしよう」と提案する。
ドリスは弟とともに母親の元に戻るが……。
ふたりの関係は実話に基づくそうだが、階級や人種、国籍、そしてなにより障害を超えた出会いを教えてくれる。
(エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ監督/2011年/フランス/113分)
