誤解されやすい障害
著者は42歳の会社員で既婚、8歳になる息子がいる。
アスベルガー症候群とは「自閉症の中で知的発達の遅れがないもの」で、人づきあいが苦手、冗談が通じないといった特徴はあるが、「ちょっと変わったヤツ」と思われて見過ごされがちという。
著者がみずから障害を疑い、確定診断を受けたのは40歳のとき。
だが、それ以前から他人の話を理解するのが苦手で、思っていることをすぐ口に出すなど苦い経験を重ねてきた。
好きなことには一生懸命で、粘り強さは人一倍だが、計画を立てるのが苦手で、ふたつ以上のことを同時にできない…。
読みすすめていくと、自分も診断を受けたほうがいいような気がしてくる。
しかし、上司に怒鳴れて自律神経失調症になり、仕事を辞めても幻聴が聞こえて苦しむあたりを知ると、実に繊細な病気であることがわかる。
著者は、うつ病という合併症も抱え、ストレスが大きくなるとパニックを起こしたり、身体が震えたりしびれに悩まされたりもする。
だが、「対人ストレスへの弱さ」は克服できないわけではないと前向きだ。
対人緊張で吃音にもなりがちなので、自助サークルにも参加した。
情報処理技術者試験を受けながら、こつこつ就職活動を繰り返した。
なによりも時折、登場する妻が自然体でいい。
アスベルガー症候群という周囲から誤解を受けやすい障害を知ってほしい、障害があっても働いて生きていける社会を実現したいという思いが伝わってくる一冊。
(権田真吾著/採図社/600円)
