BF162 『それでも映画は「格差」を描く』
著者の映画解説はとてもわかりやすく、アメリカのB級映画などにもとても詳しい。
前著の『映画には「動機」がある』も面白かった。
本書は『パラサイト 半地下の家族』や『ジョーカー』、『ノマドランド』、『万引き家族』など話題になった13作品をとりあげ、グローバル世界の経済格差をどのように描しているのかを説明してくれる。
映画を観たとき、それなりに理解しているつもりだったり、感動したことが、かなり浅薄な認識であることにも気づかされ、読んでいて驚いたり、恥ずかしかったり…。
なかでも、イギリスのケン・ローチ監督は2作も紹介されている。
そのひとつ、『わたしは、ダニエル・ブレイク』の説明で、「仕事が見つからないのは、仕事探しを怠けているからだ」と罰する制度は、「古く16世紀に作られた救貧法(プア・ロー)まで遡る」という指摘が印象に残った。
「貧しい人々を救う」ための法律のはずだが、実際には体に障害がない者が働かずに貧しいままでいたなら、処罰する制度だった(!)。
イギリスはヘンリー8世が6回も結婚するため、離婚できるようカトリックから英国国教会(プロテスタント)に分離した。
プロテスタントは、労働を神から与えられた使命と考えた。
「労働を尊ぶプロテスタンティズムは資本主義を発展させた」が、働けない「福祉を受ける人々は罪人のような罪悪感を背負わされる」ことにもなった。
日本でも、生活保護を利用する人へのバッシングに閉口するときがあり、みんなで首を絞めあっていると思うことがある。
勤労と福祉の関係についての指摘は思いがけなくて、勉強不足をしみじみ感じた。
(町山智浩著/インターナショナル新書/900円+税)
