CF095 『モヒカン故郷に帰る』

CF095 『モヒカン故郷に帰る』
末期がんの父親とのつきあい方
栄吉(松田隆平)は、パンクバンドのリードボーカル。
東京のライブハウスに出ているが、売れない。
おまけに、「この後、健康保険や年金払えるかな…」というメンバーの小市民的な不安を説得できない弱気なリーダーだ。
活動が行き詰まるなか、恋人・由佳(前田敦子)の妊娠をきっかけに、ふたりで瀬戸内海の島に暮らす両親を7年ぶりに訪ねることにした。
酒屋を営む父親の治(柄本明)は「1977年、日本武道館に居た!」が自慢の矢沢栄吉フリーク。
長男の名は当然、矢沢(広島県出身)にちなんだもの。
今は地元高校の10人足らずのブラスバンド・コーチが生きがい。
母親の春子(もたいまさこ)は、広島カープの熱狂的なファン。
父母はモヒカン頭の息子に唖然、無職と聞いて憮然。
だがまあ、帰ってきたのは嬉しい。
島の仲間を集めて宴会を開き、大いに盛り上がるが、治が突然、倒れた。
病院に担ぎ込むと、肺がんの末期という診断。
治と幼なじみの主治医・竹原(木場勝己)は、関西の大病院での治療を勧めるが、治は「親父も苦しんだからな。痛いのはイヤだ。俺はお前でいい」と島に留まることを選ぶ。
両親から口々に「いったん東京に帰れ」と言われた栄吉は、由佳と共に船に乗ったものの、心残りがあって引き返す。
気丈にふるまっていた春子だが、戻ってきたふたりに喜びを隠せない。
在宅療養の準備が整い、栄吉は父親に「死ぬまでにやりたいことリスト」を書けと言い、「エーチャンに会いたい!」と頼まれて困惑する…。
日本人の死因のトップは「悪性新生物」、つまりがん。
127万人の死者(2014年)のうち、3割はがんで亡くなっている。
「親って先に死ぬんだよな」とつぶやく栄吉の未来は不測だが、不肖の息子が懸命に父親と接する姿がほほえましくもある。
多くの人が出会う確率が高い人生イベントをコミカルに描いた作品。
(沖田修一監督/2016年/日本/125分)

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