CF096 『さざなみ』

CF096 『さざなみ』
45 Years
平穏熟年カップルに忍び寄るサスペンス
シャーロット・ランプリングといえば、『愛の嵐』(リリアーナ・カヴァーニ監督、1973年)。
酷薄な美人ぶりで、映画ファンをうならせた彼女も70歳。
本作では、イギリスの田園地帯に暮らす、平凡な引退カップルの妻を演じている。
ケイト・マーサー(シャーロット・ランプリング)は元教師で、夫・ジェフ(トム・コートネイ)とふたり暮らし。子どもはいない。
毎朝、愛犬と散歩に出かけ、ジェフを起こし、薬を飲ませて朝食。
雑用をこなして夕食。
おだやかで少し退屈な日々を過ごしているが、週末には2人の結婚45周年パーティーが控えている。
本当は40周年を祝うはずだったが、ジェフの入院で延期されたのだ。
退院後の夫は無気力な毎日だが、ケイトはパーティーの準備を淡々とこなす。
そんなある日、ジェフに郵便が届いた。
なんと、彼にはケイトと結婚する前に、婚約者がいたのだ。
手紙は、スイスアルプスで遭難し、氷河に閉じ込められていた婚約者の遺体が、50年を経て発見されたという知らせだった。
結婚前の話なのだからと動揺を抑えようとするケイトだが、夫が語る亡き婚約者への嫉妬、芽生えてしまった夫への不信に苦しむ。
葛藤の日々の末、迎えた45周年パーティー。
ジェフは愛をこめて妻への感謝を語り、感極まって涙ぐむが、ケイトの心は…。
日本でも、介護している夫に昔の浮気を楽しそうに語られ、怒りにかられて殺してしまった事件があったことを思い出す。
仲睦まじい老夫婦を描いた『東京物語』(小津安二郎監督、1953年)は国内外でいまだに高い人気を誇るが、その理由のひとつは、笠智衆と東山千恵子が演じた穏やかな老夫婦への普遍的な憧れがあるのかも知れない。
ケイトの心が「さざなみ」だけで収まるのか、荒れ狂ってしまうのか、ちょっとどきどきする作品。
(アンドリュー・ヘイ監督/2015年/イギリス/95分)

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