CF097 『最高の花婿』
Qu’est-ce qu’on a fait au Bon Dieu?
乗り越えようとするフランス
フランスのロワール地方に暮らすクロード(クリスチャン・クラヴィエ)とマリー(シャンタル・ロビー)は上流階級で、敬虔なカトリック教徒。
夫婦仲はまずまずで、美しい4人の娘がいる。
絵に描いたように幸せかというと、弁護士の長女はイスラム教徒の同僚、歯科医の二女はユダヤ教徒の起業家(失業中)、売れない画家の三女は中国人ビジネスマンと相次いで結婚してしまった。
両親としては寛大に祝福するが、まあ無理はある。
ムコさん同士も異質の組み合わせなので、多国籍一族の会話はエスプリたっぷりでスリリング。
ある日、我慢できなくなったクロードは「私はド・ゴール主義者(保守派)だが、4人の娘のうち3人を移民に渡した!」と切れた。
当然、娘たちから冷ややかな視線を浴び、絶縁状態を招いてしまった。
マリーは夫に同調したものの、娘と孫たちが恋しくて、うつ病になってしまう。
カウンセリングを繰り返した彼女は「みんなフランス人よ。娘たちの幸せが私たちの幸せ」という悟りの境地に至る。
クリスマスに全員を呼びよせ、和解のパーティーを開くと張り切った。
ところが、夫婦が最後の期待を寄せる四女は、カトリック教徒ではあるが、コートジボワール出身のアフリカ系青年にプロポーズされていた…。
フランスは植民地支配の歴史的背景もあり、国民の10.3%が移民という。
ひるがえって日本の移民受け入れ率は1.7%足らず。
鎖国時代も長かったし、私たちは移民慣れしていない。
とはいえ、EPA介護福祉士候補者の定着も進まないなか、今国会では外国人留学生の在留資格や外国人技能実習制度に介護を新たに入れる予定という。
相次ぐテロ事件に傷つきながらも、フランス革命の「自由・平等・博愛」を国是に、差別や偏見を乗り越えようとするパワーに満ちた本作を観て、多文化共生のリアリティを学ぼう。
(フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督/2013年/フランス/97分)
