CF098 『或る終焉』

CF098 『或る終焉』
Chronic
終末期プロフェッショナルの葛藤
舞台はアメリカ。
デヴィッド(ティム・ロス)は民間会社の訪問看護師として、終末期の裕福な人たちの暮らしを支えている。
エイズ患者のサラの場合、入浴や食事の介助に服薬、見舞いに来た親族との面会時間も調整する。
亡くなった時はていねいに身体を清め、葬儀にも参列。
帰宅途中に立ち寄ったバーでは、サラを妻と見なして隣人に惜別の情を語る。
脳卒中で半身マヒになった初老のジョンには、リハビリもほどこす。
彼が建築家と知り、建築の写真集を持参して語り合い、ポルノグラフィを観るのも許す。
ところが、頑固な父親がデヴィッドには心を開く姿に、子どもたちは疎外感を覚え、嫉妬する。
子どもたちはデヴィッドをセクハラで訴えると会社に通告。
所長に「事実無根だ」と抗議したが、辞めざるを得なかった。
傷心のデヴィッドは、別れた妻と娘が暮らす街に戻る。
どうやら彼は、ガンの骨転移で苦しんだ息子を安楽死に導き、それが原因となって離婚した過去があるらしい。
しかし、医学生になった娘は父の帰還を素直に喜び、妻も会うことを受け入れる。
再就職先で紹介された仕事は、放射線治療を受けているマーサの病院への送迎だ。
お金がない彼女は、それ以外は不要と言う。
だが、デヴィッドは副作用に苦しむ彼女に献身的に介護する。
マーサは娘2人と孫もいるが、関係は疎遠だ。
おまけに化学療法の効果はなく、転移した。
ある日、彼女はデヴィッドに「治療は止める。心配しているなら、息子さんの時にように手を貸して」と頼んできた。
「断るよ」と即答したデヴィッドだったが…。
民間サービスに依存するアメリカの在宅介護や、訪問看護師の仕事ぶりがとても興味深いが、主人公が抱える私的な苦悩と、衝撃的なラストシーンが複雑な思いを深める作品。
(ミシェル・フランコ監督/2015年/メキシコ・フランス/94分)

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