CF100 『92歳のパリジェンヌ』
La derniere lecon
死ぬ日を自分で決める意志
92歳の誕生日、マドレーヌ(マルト・ビラロンガ)は、「100歳まであと少し」と祝福する子どもたちを前に、「2カ月後の10月17日、私はこの世を去ります」と爆弾宣言。
息子のピエール(アントワーヌ・デュレリ)は「老人性うつだ。施設に入れる」と怒り、娘のディアーヌ(サンドリーヌ・ボネール)は「私の家に来て。私が世話をする」と申し出る。
オーストラリアに行く予定の孫のマックス(グレゴール・モンタナ)は「5月に戻ってくるまで待ってよ」と甘える。
だが、助産師として長く働き、フェミニズムの闘士でもあったマドレーヌは、「気力があるうちに死にたいの」、「スイス(注・積極的尊厳死の支援団体がある)に連れて行けとまでは言わないから、認めて」と耳を貸さない。
しかし、母親の性格を充分、承知している子どもたちが悩んでいる間に、マドレーヌは転倒して救急車で入院するはめに。
病棟は高齢者であふれ、「30年前から、点滴につながれて死ぬのはイヤと言ってきた」と必死に主張し続けるマドレーヌに、ディアーヌは根負け。
母親の意志を「受け入れる」と告げて、彼女のアバルトマンに連れ戻す。
ところが、ピエールが乗りこんできて、自殺用の薬を持ち去ってしまった。
「病院で死ねばいいんでしょ」と嘆くマドレーヌに、ディアーヌはある作戦を提案する…。
高齢者の自己決定と尊厳をみつめる本作は、個人主義が徹底したフランスならではと思わせられるが、ジョスパン元首相の母親をめぐる実話(原作タイトルは『最後の教え』)に基づくという。
家族が居合わせれば「自殺ほう助罪」になることや、患者が亡くなると夜のスタジアムで走り込む看護師のエビソードも印象的で、コメディ要素を盛り込んだストーリー展開にはなぐさめられる。
とはいえ、「健康寿命の延伸」や「自立支援」をキャッチコピーに、肝心なところを迂回する超高齢社会ニッポンの課題も突きつけられた気分になる作品。
(パスカル・プザドゥー監督/2015年/フランス/106分)
