CF101 『手紙は憶えている』

CF101 『手紙は憶えている』
Remember
記憶とは何かを問う復讐劇
アメリカの高級老人ホームに暮らす90歳のゼヴ(クリストファー・プラマー)は朝、目覚めると愛妻を探す。
だが、彼女はすでに亡くなっているのだ。
同じホームに暮らすマックス(マーティン・ランドー)は、アウシュビッツ収容所でゼヴと出会った。
ふたりとも家族を皆殺しにされたが、奇跡的に生還し、ともにアメリカに渡った。
その後は音信不通だったのだが、老いてホームで再会した。
マックスは家族を殺したナチス兵士が逃げ延びて、アメリカに渡っていることを突き止めた。
候補者は4人。
だが、司法判断を待っていては、死んでしまうかも知れない。
ゼヴは、車いすで呼吸器が手放せないにマックスにかわって、相手を探し出し、復讐を果たすことを約束する。
マックスは練った計画を記した手紙をゼヴに渡し、毎日読むようアドバイス。
ゼヴは毎日、新たに手紙を読み返しながら、目指す兵士を見つけだす旅に出る。
しかし、記憶障害は進み、翌日にはミッションを忘れてしまう。
観ているほうも、はらはらさせられっぱなし。
だが、人びとの善意に助けられながら、殺人遂行のため北米大陸をさすらう姿は、シュールでもある。
候補者の1人目は戦時中、ロンメル将軍のもとで北アフリカに駐留し、すでに亡くなっていた。
2人目は病床にあり、同性愛者として収容所にいた犠牲者だった。
3人目は狂信的ナチス信奉者だが、当時、10歳だったうえ、死亡していた。
では、標的は残る4人目だ…。
1929年生まれのクリストファー・プラマーが、認知症の殺人者を演じると知った時、コメディかなとも思った。
ところがどっこい、ドラマの起点はナチス・ドイツのホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)で、老いとともにある認知症の姿のみならず、忌まわしい過去のすり替えがあり、衝撃のラストという多重構造だ。
第二次世界大戦の記憶を持つ人が残りわずかであることを教えられるとともに、記憶とはなにかを問われる作品。
(アトム・エゴヤン監督/2015年/カナダ・ドイツ/95分)

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