CF106 『モリー先生との火曜日』
Tuesdays with Morrie
恩師との最期の交流
学生のときにお世話になった先生が、老いて死にゆくときに、ひんぱんに訪ねることがあるだろうか。
本作はアメリカで長くベストセラーになった同名のノンフィクションが原作だ。
ミッチ(ハンク・アザリア)は、デトロイトを拠点に活躍するスポーツライター。
飛行機とホテルと携帯電話の毎日に、デートの約束もすっぽかしてばかり。
ある日、テレビのニュースで、大学時代の恩師・モリー(ジャック・レモン)の姿をみかける。
ALSになったモリーは、テレビのインタビューで「私は、人生最後の旅の準備をしている、生きた教科書だ」と語っている。
卒業のとき、連絡すると約束したのに、16年も会っていない。
多忙な仕事にまぎらわせ、連絡するのを先延ばしにしていたミッチだが、さんざん迷った挙句、1100キロ離れたボストンに暮らすモリーを訪ねる。
恩師は「やっと来てくれたか」と喜び、「君は幸せか?」と問う。
今生の別れを告げるつもりだったのに、「また来い。約束だ」とも言われ、教え子はとまどう。
だが、仕事三昧の日々に戻ったものの、恋人のジャニー(ウェンディ・モニツ)に愛想をつかされて、ミッチは「どこで自分を見失った?」と自問する。
悩んで、再びボストンを訪ねた彼は、モリーに「一緒に考えよう」と提案され、「人生のレッスン」を受けることにした。
仕事をキャンセルし、大学時代の学生相談日と同じ火曜日に、ソニーのテープレコーダー(時代ですね)を持って、通いはじめる。
モリーは、少しずつ身体が動かなくなり、酸素ボンベを使いながら、ユーモアをまじえ、やさしく語り続ける。
病気の苦痛、死への恐怖、教師になった理由、ロシア移民として過ごした貧しい子ども時代のこと…。
だが、病気は進んでいく。
モリーに「人は愛しあわなければ、死んでしまう」と言われ、ミッチは「人を愛しても死んでしまう。先生の死は受け入れられない」と泣きながら反論する。
だが、モリーは「死んで人生は途切れるが、絆は切れない」と応える。
名優ジャック・レモンの最後の主演作に感銘を受けたが、「死に方がわかれば、生き方もわかる」というモリーの言葉はむずかしい。
(ミック・ジャクソン監督/1999年/アメリカ/111分)
