CF111 『きっと、いい日が待っている』
Der kommer en dag
宇宙飛行士と透明人間
1967年、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領は、人類を初めて月に送る「アポロ計画」を発表した。
その頃、コペンハーゲンに暮らす13歳のエリック(アルバト・ルズベク・リンハート)と10歳のエルマー(ハーラル・カイサー・ヘルマン)は、天体望遠鏡を万引きしようとして捕まっていた。
父親は数年前に自殺し、母親は懸命に働いていたが、がんに侵されていた。
兄弟が大好きな叔父さんは、学生運動の活動家で定職がなく、保護者不適格。
ふたりは、児童養護施設に行くしかなかった。
送ってきた叔父さんに、ヘック校長(ラース・ミケルセン)は「心配ありません。最高の施設です」と言った。
しかし、先輩格の少年は、エリックに「15歳まで透明人間でいろ」とささやく。
15歳になれば、「永久許可証」をもらって施設を出ることができるのだ。
でも、戦闘的なエリックは、厳格を超えて抑圧的な施設に我慢できない。
足が悪く、宇宙飛行士を夢見るエルマーは、不良グループのいじめの標的だ。
弟をかばうエリックは、体罰禁止のはずなのに、「しつけなければならない」と校長から暴力をふるわれる。
あらゆる抵抗をあきらめている子どもたちが、エルマーの空想譚に心をなごませるシーンがほほえましい。
兄弟はクリスマスの帰省を心待ちにしていたが、母親は亡くなってしまった。
悲しむことも許されず、叔父さんに脱走支援を求めてもかなわず、エリックは「透明人間」になり、模範生に徹した。
2年後の1969年、アポロ11号がついに月面着陸した。
特別に許可された衛星中継のテレビに見入る子どもたち。
だが、その時、エリックは校長から絶望的な話を聞かされていた…。
実話にもとづくそうだが、子どもたちの抵抗を禁じる手法や薬物投与、性的虐待まで淡々と描かれる。
現代のデンマークは、社会保障が充実し、国民負担が高いにもかかわらず「世界で一番幸福な国」として知られている。
すぐれた制度を築くには、前史に対する真摯な反省があることを教えられる作品。
(イェスパ・W・ネルスン監督/2016年/デンマーク/119分)
