CF120 『ラッキー』
LUCKY
真理と向き合う90歳
舞台は巨大なサボテンが林立するアメリカの砂漠地帯。
メキシコ系の住民も多く、トランプ大統領が国境フェンスを作ったあたりみたい。
そんな町のはずれに、90歳のラッキー(ハリー・ディーン・スタントン)はひとりで住んでいる。
痩せぎすの彼は、「元気?」と問われると、二コリともせず「今のところは」と応える愛想なしだが、住民たちはみんな知り合いだ。
朝起きるとまず、タバコを一服。
ラジオのラテン音楽で体操をし、牛乳をコップ一杯飲む。
身支度をして、照りつける太陽を背に、町のダイナーまで歩く。
店主と軽口を交わし、コーヒーを飲みながらクロスワードパズルを解く。
雑貨店で牛乳を買い、ある場所で立ち止まり、一言ののしる。
帰宅してクイズ番組を観た後、「エレインの店」に出かけて、テキーラベースのブラッディ・マリアを楽しむ。
いくぶん不健康で規則正しい暮らしだが、ある朝、キッチンで倒れてしまった。
驚いて検査を受けてみると、顔なじみの医師は「血圧も心臓も正常。脳しんとうの兆候なし。喫煙者だが肺も正常。骨折しなくて何より」と説明。
「どうすりゃいい」と問えば、「丈夫すぎるじいさんだ。寿命は伸び続ける」という宣告。
倒れたと聞いた住民たちが心配するのにへきえきとしたものの、その夜、ラッキーは初めて死ぬのが「怖いんだ」と意識した。
翌朝、ダイナーを訪れた退役海兵隊員と、お互いに太平洋戦争に従軍していたことを知る。
タラワと沖縄の上陸戦を体験した彼は、死の恐怖のなかで日本の幼い少女が微笑んだことが忘れられないと語った…。
現実主義者のラッキーが「真理に向きあい、受け容れる」道筋がユーモラスに、たんねんに描かれる。
なお、アメリカ人の平均寿命は78.5歳と短い。
肥満と薬物乱用、そして高い医療費が原因とされるが、名優で知られた主演のスタントンは2017年、91歳で亡くなった。
映画で医師から「遺伝的にラッキー」と言われたように、まれな存在だった。
(ジョン・キャロル・リンチ監督/2017年/アメリカ/88分)
