CF132 『楽園』

CF132 『楽園』
「共生社会」の暗部を衝くミステリー
緑が鮮やかな田園のY字路に、ひそやかに育まれた地域社会の悪意をめぐり、ふたつの物語が交錯する。
ひとつめは、幼い少女の失踪事件。村の男たちはこぞって捜索に参加したが、少女は行方不明のまま、10年が過ぎた。
失踪直前まで少女と一緒だった紡(杉咲花)は、罪の意識をぬぐえない。
おまけに、少女の祖父・五郎(柄本明)はやり場のない感情を理不尽にぶつけてくる。
そんなある日、紡は豪士(綾野剛)と出会い、不思議な共感を抱く。
彼の母はアジア系で、農村花嫁として来日し、離婚を経て、男を転々としていた。
母子は偽ブランド品販売やリサイクルで生計を立てている。
そして再び、子どもが行方不明になった。
孫娘の悲劇がよみがえった五郎は興奮にまかせて、豪士が犯人だと叫んだ。
もうひとつは、追いつめられた豪士の惨劇を目撃していた善次郎(佐藤浩市)の物語。東京に出て働いていた彼は、愛妻に先立たれ、父親の介護のため村に戻っていた。
看取りを終え、養蜂業を軌道に乗せた彼は、村おこしのアイデアを温めていた。
五郎をはじめ村の長老たちは好意的にみえたが、善次郎が役場に相談して補助金を獲得したことで、態度を反転させた。
村では若手の彼を重宝がっていた妻たちも、一斉に沈黙した。
「村十分」で孤立した善次郎には、少女失踪の犯人ではないかという疑いまでかけられた…。
2020年の東京パラリンピックは「共生社会」が理念だったが、介護保険法改正案には「地域共生社会の実現のため」とヘッドラインがつく。
ついでに言えば、外国人農村花嫁の受け入れ事業でも、「多文化共生」が掲げられた。
その文脈で観ると、「共生社会」のダークサイドをえぐるようにも思えるミステリー。
(瀬々敬久監督/2019年/日本/129分)

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