CF136 『私のちいさなお葬式』
Thawed Carp
「余命わずか」の実行力
舞台はロシアの小さな村。
がっしりした木造住宅が数軒並ぶ一画で、73歳のエレーナ(マリーナ・ネヨーロワ)は慎ましく年金生活を送っている。
彼女は村唯一の学校で、教師として働いていた。
ある日、教え子の医師から慎重かつ遠まわしに、いつ心臓が止まってもおかしくないと告げられた。
そして、病院からの帰り道、これまた教え子から、釣りあげたばかりの太った鯉を押しつけられた。
家に戻り、鯉を冷凍庫に入れた途端、エレーナは倒れてしまった。
入院した彼女の元に、ひとり息子のオレク(エヴゲーニー・ミローノフ)が駆けつけた。
だが、自己啓発ビジネスに多忙な息子は、母親の無事を確かめると、モスクワに帰ってしまった。
隣人で親友のリューダ(アリーサ・フレインドリフ)は憤慨するが、エレーナは成功したひとり息子が自慢だ。そして、ロシア版「完璧なお葬式」の準備をはじめた。
まず、遺体安置所に勤める教え子に死亡診断書を書かせ、戸籍登記所で「これであなたはもういない」と埋葬許可証を発行してもらう(こういうのを官僚主義と言うのか?)。
葬儀屋では気にいった真っ赤な棺を購入し、手押し車とバスで家まで運んだ。
墓掘り人には、夫の墓の隣に自分の埋葬場所を掘ってもらった。
後は、お葬式でふるまう料理の準備をしなくては…。
「終活」ではなく、自分のお葬式を実際に準備するというブラックユーモアに、冷凍庫の鯉が生き返るというおとぎ話がまじりあう。
エレーナは子どもの世話になるのをあきらめてはいるけれど、思いは別にあることを教えるほのぼのとした作品。
(ウラジーミル・コット監督/2017年/ロシア/100分)
