CF137 『ヴァンサンへの手紙』
J’avancerai vers toi avec les yeux d’un sourd
聞こえない人たちの声
プロローグは、監督みずからの手話によるヴァンサンへのメッセージからはじまる。
ヴァンサンは聴覚障害があり、監督の友人だった。
当事者の視点で映画を作ろうと約束していたが、彼は10年前に命を絶ってしまった。
ヴァンサンへの想いを胸に、監督はインタビューを重ねた。
ヴァンサンの友人だったステファヌは、家族みんなが聞こえなかったので、手話で育った。
プロの手話講師として働き、ふたりの子どもたちは手話と口話のバイリンガルだ。
サンドリーヌはろう学校で口話教育を受けたが、寮での集団生活は楽しくなかった。
手話は習ったことがない。
同居している母親が亡くなった後を考えると怖い。
たくさんの本人たちの話から、口話教育や補聴器、人工内耳の使用は、聞こえる人の都合で、一方的に決められたことがわかってくる。
発声に努力しても、外では通じない。
親が強制不妊手術を受けさせられた人もいるし、幼い息子が聞こえないことがわかり「彼の母語はなにか?」と悩む両親もいる。
興味深かったのは、普通学校では、手話通訳士がつくのは1日数時間と制約があるという課題だ。
聞こえない子どもはコミュニケーション不足になり、孤立する。
解決策として、数は少ないが、手話を話す教師たちがそろうバイリンガル学校がある。
手話で学び、遊ぶ子どもたちの生き生きとした姿がとらえられている。
フランスでは1834年に「ろう協会」が設立されたという。
長い歴史があってもなお、聞こえない人がのびやかに感情を表現できる手話の普及には困難がある。
エッフェル塔を背景に、俳優のレベントが手話ポエムを語るのは実に優雅だ。
手話が美しく、豊かな言語であることを知る作品。
(レティシア・カートン監督/2015年/フランス/112分)
