CF144 『旅立つ息子へ』
Hine Anachnu
父と子が共に自立するには…
アハロン(シャイ・アヴィヴィ)は売れっ子イラストレーターだったが、自閉症のひとり息子・ウリ(ノアム・インベル)との暮らしを優先して、ほとんど仕事をしていない。
妻とは別居で、いつもウリを愛情でくるみ、行動を共にしている。
彼のお気に入りは、チャップリンの『キッド』で、携帯テレビで繰り返し観る。
好物は、父が作る星型パスタ(どんなパスタだろう?)。
だが、息子は父より少し背が高く、もはや少年ではない。
妻のタマラ(スマダル・ボルフマン)は、「あなたに何かあったら、どうするの?」と障害者施設に入所して学ぶべきだと主張する。
大人になりかけの息子といつまでも手をつないでいられないことは、アハロンもわかっている。
だが、施設でうまく過ごせるか心配だし、まだ、手放したくない。
どこの国でも、特に障害のある子どもを育てる親には共通の心理だろう。
とはいえ、舞台はイスラエル(耳慣れないヘブライ語が新鮮)。
社会福祉制度は整い、息子の施設入所には、父親に定収入がないこともあり、裁判所の強制力が働く。ついに、施設に連れていく日になったが、駅の乗り換えで、ウリはパニックを起こす。
行き交う人たちの迷惑そうな視線を浴びながら、なんとアハロンは息子を連れて、逃げ出してしまった。
妻には誤解されて、クレジットカードを止められ、ついには知人を頼ってアメリカに渡ろうとまで、思いつめた父はどうするか…。
旧約聖書や十字軍からイスラエル建国まで、歴史の教科書で習うシナイ半島のロードムービーは、地中海から高原、砂漠地帯とめまぐるしく変わる風景も楽しませてもくれる。
(ニル・ベルグマン監督/2020年/イスラエル・イタリア/94分)
