CF152 『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』
Mr. Holmes
記憶力の衰えと格闘する名探偵
シャーロック・ホームズの映画では、『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』(バリー・レヴィンソン監督、1985年)が面白かった。
コナン・ドイルの小説にはない、名探偵の学生時代を描いたミステリーだ。
本作もドイル作品にはない93歳(!)のホームズで、第二次世界大戦直後、1947年という設定。
名探偵はすでに30年前に引退し、イギリス南西部の「ドーバーの白い壁」をのぞむ田園で、養蜂を趣味に暮らす日々。
相棒のワトソン博士も兄・マイクロフトもこの世を去り、ホームズの最大の不安は記憶力の衰えだ。
自家製のロイヤルゼリーに効果はなく、なんと日本に、それも被爆の爪痕が残る広島に、希少なサンショウ(本当にあるのか?)を求めてやってくる。
だが、イギリスに戻っても、自分が引退する引き金となった1919年の「最後の事件」は思い出せない。
住み込み家政婦として働くマンロー夫人は、10歳の息子・ロジャーを育てる戦争未亡人。
偏屈なホームズに嫌気がさして、転職を企てるが、ロジャーは老いた名探偵に興味津津。
ホームズは蜜蜂の世話をしながら、少年と会話を交わすなかで、少しずつ記憶を拾い集め、みずから事件の過程をまとめていくが…。
イギリスのテレビシリーズでは、ヴィクトリア朝時代のロンドンを忠実に再現した『シャーロック・ホームズの冒険』(ジェレミー・ブレット主演)、21世紀版の『シャーロック』(ベネディクト・カンバーバッチ主演)を観たが、ホームズは自信たっぷりで、嫌味な名探偵。
本作でイアン・マッケラン(1939年生まれ)が演じるホームズは、昔のことは思い出せないが、天才的な観察力は健在。
そして、「最後の事件」を完璧に思い出し、自分の完璧な論理が、人の情緒を壊し、追い込んでしまったと後悔する。
名探偵の老いと「最後の推理」を楽しむ作品。
(ビル・コンドン監督/2016年/イギリス・アメリカ/104分)
