CF157 『サンドラの小さな家』
Herself
「彼女自身」を取り戻す物語
舞台は、アイルランドの首都・ダブリン。
サンドラ(クレア・ダン)は、幼いふたりの娘を抱え、暴力をふるう夫から命からがら逃げ出した。
しかし、公営住宅は長い順番待ちで、シェルターとして用意された郊外ホテルの一部屋で我慢するしかない。
家事サービスとパブのスタッフをかけもちしながら、娘ふたりの親権を得るための裁判も控えている。
なりよりもつらいのは、面会を保障するため、娘たちを夫の家に送り届けること。
顔を合わせるたびに戻ってこいと言う夫に身の毛がよだち、虐待の記憶がフラッシュバックし、呼吸困難に陥る。
そんなとき、コンパクトな家なら、自力で建てることができることを知り、希望が芽生える。
土地も資金もないのにと悩んでいた時、母親の代から家事サービスに入っていたペギー(ハリエット・ウォルター)が、自分の土地を貸そうと提案してくれた。
思いがけない幸運に、サンドラはためらいながらも、計画の実現に踏み出す。
建築業者を拝み倒して基礎工事を頼み、家の組み立て作業には、娘の保育園で知りあった母親やパブで働く仲間に勇気を振り絞って協力を求めた。
心身ともに傷つき、おびえていたサンドラは、仲間を得ることで、少しずつ自信を取り戻す。
裁判では、母親にも非があると責め立てる夫側弁護士の厳しい追及に、めげそうになる。
しかし、支援センターのスタッフや弁護士に励まされ、ぎりぎりのところで、自分の言葉で主張することができた。
だが、家の完成を目前に、みんなで祝杯をあげているときに、とんでもないことが起こった…。
DV被害にあった女性は、孤立しがちだ。
とくに子どもを抱えている場合、経済的にも社会的にも苦境にあえぐ。
日本でも、母子家庭の平均年収は200万円。社会保障では最大の課題だが、対策は鈍い。
本作は、世界共通ともいえるシングルマザーの困難を細やかに教えてくれるとともに、アイルランド的ともいえる素朴で、ほほえましいコミュニティのあり方を描き出す。
(フィリダ・ロイド監督/2021年/アイルランド、イギリス/97分)
