CF158 『ノマドランド』

CF158 『ノマドランド』
Nomadland
漂泊するアメリカの「生涯現役社会」
「米アマゾンで労組結成へ」という新聞記事が目にとまったのは、本作を観ていたせいだ。
リーマンショックの後、ファーン(フランシス・マクドーマンド)は、亡き夫と暮らした町のレンタル倉庫に家財道具を押し込み、放浪の旅に出た。
砂漠のなかの町・エンパイアは、社宅も公民館も丸抱えの企業城下町だった。
だが、工場が閉鎖になり、住民は立ち退きを求められ、郵便番号も抹消された(日本だと、炭鉱の閉山を思い出す)。
最後まで残っていた彼女が最初に向かったのは、アマゾンの巨大倉庫。
クリスマス・シーズンの臨時採用で、用意された駐車場で自分の車に寝泊まりしながら働く。
1回のシフトで倉庫の中を20キロ以上歩き、梱包作業で腰痛になり、バーコードのスキャンで腱鞘炎になる。
家を失った、あるいは家を捨てた高齢者たちが毎日、懸命に働いている。
彼ら彼女らは、北米大陸を車で移動しながら働く、「ノマド」(遊牧民)だ。
働けるくらい元気という制約つきだが、住宅ローンや高額家賃から解放された「シニア・ヒッピー」たちは明るく、お互いを思いやる力を持っている。
映画では、「ノマド」本人も多数、登場する。
リンダ・メイは、ファーンを集会に誘う。各地から集結した「ノマド」たちがキャンプファイアーを囲んで交流する。
彼女は車中生活の基本を学び、国立公園での次の仕事に向かう。
途中の雄大な景色は素晴らしいが、広大な北米大陸といえども、車中泊が許される場所が限られ、夜間に追い立てられることに驚いた。
ファーンには豊かに暮らす姉がいて、同居を望まれている。
季節労働で知り合った男性にも、一緒に暮らさないかと誘われる。
だが、彼女はまだ、夫が忘れられない。
年金だけでは暮らせないし、なによりも、働いて生きていきたい…。
原作はノンフィクションで、「漂流する高齢労働者たち」とサブタイトルがつく。
近年は、各国を転々とする「デジタルノマド」というITワークで稼ぐ若者たちもいるそうだ。
とはいえ、社会保障も自己負担も少ないアメリカの高齢者の「自立心」に富む暮らしぶりに、複雑な思いが交差する。
(クロエ・ジャオ監督/2021年/アメリカ/108分)

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