CF160 『パーフェクト・ケア』
I Care a Lot
法定後見制度はブラック・ビジネス?
出だしから、えぐいテーマだなあと思った。
マーラ(ロザムンド・パイク)は、法定後見人をビジネスにするキャリア・ウーマン。
というのは表向きで、公私ともにパートナーのフラン(エイザ・ゴンザレス)と、身寄りのないお金持ちの高齢者をリサーチして、法定後見人になりすまし、資産を根こそぎ強奪する詐欺師だ。
診断書を担当する医師を抱き込み、提携する豪華な老人ホームは二重セキュリティに屈強な介護スタッフをそろえ、理不尽な境遇に抵抗する高齢者は薬漬け。
法定後見人を審査する裁判所では、母親と面会できないと苦情を申し立てる無職の中年息子より、ブロンドにピンヒール、高級スーツを着こなし、よどみない説明をするマーラのほうが、裁判官の信頼は厚い。
モダンなマーラのオフィスの壁には、カモにされた高齢者の写真がびっしりと並んでいる。
ある日、マーラとフランはジェニファー(ダイアン・ウィースト)に目をつけた。
定年退職後、一軒家で悠々自適の暮らしをしている彼女に身寄りはなく、理想的なターゲット。
裁判所の許可が出た途端、家財道具をオークションにかけ、家は売りに出す。
また、儲かるとふたりは皮算用をするが、なんと、ジェニファーの背後にはロシアン・マフィアがいた!
こわもてのマフィアのボス(ピーター・ディンクレイジ)とマーラたちの攻防戦が、ドジだったり、残忍だったりとジェットコースターのように展開する。
自分の悪事は棚に上げ、脅されても屈しないマーラのタフさに驚嘆もするが、弱肉強食の極致のよう。心優しい人には向かない映画かも知れない。
日本でも、資産管理をまかされた成年後見人の悪事が時折ニュースになるけれど、ブラック・ビジネス化しているのは特殊詐欺のほうだろう。
本作は「ブラックコメディ・スリラー」と銘打たれ、フィクションとして楽しむこともできる。
とはいえ、ブレイクソン監督は実際に起きた事件に着想を得たそうで、儲かりさえすれば「ビジネス」と称賛されるえげつない資本主義を皮肉り、性善説に頼る成年後見制度の弱点を痛烈に指摘する作品でもある。
(ジョナサン・ブレイクソン監督/2021年/アメリカ/118分)
