CF166 『金の糸』

CF166 『金の糸』
Okros dzapi
辛かった過去と和解するには…
ジョージアは黒海沿岸の小国。
旧名・グルジアのほうが長寿の源とされるワインや、素朴派の画家・ピロスマニなどでなじみ深い。
古代から交通の要衝で、モンゴル、オスマン、ロシアなどの帝国支配を受け、ソビエト連邦共和国を経て、1991年に独立を果たした。
舞台は古都・トビリシの伝統的な集合住宅。
広い中庭があり、住民はバルコニー越しに言葉を交わす。
赤い髪のエレネ(ナナ・ジョルジャゼ)は作家で、「今日は私の79歳の誕生日なのに、誰も覚えていない」と書く。
忘れているどころか、娘は夫の母・ミランダ(グランダ・ガブニア)の認知症が進んでいるので、エレネと同居させようと連れてくる。
芸術家のエレナは、ソ連時代に政府幹部だったミランダが苦手なのに…。
そんなとき、かつての恋人・アルチル(ズラ・キプシゼ)から電話が来た。
彼は妻を亡くしたばかりで、車いす生活。エレネは足の手術をして以来、外出できない。
アルチルと電話で語りあうようになった彼女は、「私たちは年金暮らしのロミオとジュリエットね」とつぶやく。
彼は「喜びの才能が俺たちの民族的気質で、陽気な悲劇に救われるんだ」と応じる。
ふたりの会話から、エレネはソ連政府を批判したデビュー作が発禁になり、20年も本を出せなかったことがわかってくる。
そして、認知症が進むミランダが発禁を決め、エレネを苦しませてきたことも発覚する。
長い時間を経て知った事実にエレネは怒り、悲しみ、そして、「政治的な対立では原則を守るべき? それとも思いやりを持つべき?」と悩む。
アルチルは少し考えて、「たぶん、思いやりだろう」と答える。
生きていくには、過去に囚われすぎてはいけないが、壊してもいけない。
エレネがたどりつくのは、日本の金継ぎ(ひびが入った陶磁器を金粉で修復する技法)のイメージだ。
監督は91歳で本作を発表した。
重荷でもある過去、あるいは歴史を「金の糸」でつなぎあわせることが、新たな形を生むという希望のメッセージかもしれない。
(ラナ・ゴゴベリゼ監督/2019年/ジョージア、フランス/91分)

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