「死の恐怖から逃れるための最大の処方箋」だった宗教が力を失った日本で、
「自分の死を平穏に受け入れる」ための必須アイテムは「教養」だけと著者は断言する。
本書は、著者45歳が急性胃潰瘍で、生まれて初めて吐血したのを機に読んだ9冊、
50歳で再起する節目に選んだ5冊、
56歳で「ふたたび激しく吐血」した時の11冊、
タクシーに乗って交通事故に会った59歳で出会った10冊
と紹介しながら、「死ぬための教養」の準備をアドバイス。
事故賠償のプロによる『命の値段』(講談社+α新書)の紹介にはちょっとびっくりしたが、
東日本大震災、福島原発事故など否応なく「賠償」に向きあわなければならない時節柄、
読むべきかも知れない。
「死への考察は、人間の最高の興味の対象」と語る一冊。
(嵐山光三郎著/新潮新書/714円)
