BF057 『くじけそうな時の臨床哲学クリニック』

 哲学が専門の著者が、「生きがいが見つからない」、「いい恋愛ができない」、「ほんとうの友だちが欲しい」、「容姿が気になる」といった若者の悩みに、少しでも楽になるように処方箋をアドバイスする。
 処方箋のなかには、いくつか気になる言葉もある。
 「これからの社会は労働環境だけを見ても、介護士のように就労とボランティアのグレイゾーンにあるような職種もふえ、この先とても流動的になりそうです」。

 「思いどおりにならない、それがケアだ。やりすぎたり、やらなさすぎたり、意図が通じなかったり、意図どおりに言葉が出てこなかったり、患者あるいはその家族に誤解されたり、何もできなかったり…。(中略)いつも最後に身をあずけたのが、この『傍らにいるだけ』という姿だったのかもしれない」


 また、親の介護や親の死に思い悩む、「意識過剰」な若者も多いという。
 「一人っ子同士で結婚したら、介護も大変になります。それぞれの両親、4人の面倒を見るわけだから。しかも、夫側の父親と妻側の母親と、2人が生き残ったりしたら一緒に住むのも難しい」。

 「他人同士だったら介護する人間に対して遠慮とか感謝とかがあって、介護する側にも報われる気持ちがありますが、身内の場合だと、そういう気持ちをもちにくい。親は、やってもらうのが当たり前と思っている人が多い。実の子どもでも、これはきつい」。

 「要するに、これまで家族が担ってきた親密な関係を、家族という枠を外して考える必要があきらかにあるんです」。
 「サービス」という言葉は「仕える・奉仕する・尽くす・勤める・奴隷である」という意味のラテン語に由来し、サーバント(召使)やコンピュータのサーバーも同じ語源なのだそう。そして、「サービス」のもとになる「サーブ」の語源は、サンスクリット語の「セーヴァ」にさかのぼり、中国にわたって「セワ」という音になり、日本語で「世話」という漢字が充てられたという説明に、大い驚いた。
(鷲田清一著/ちくま学芸文庫/997円)


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