「機会の不平等」が招いた「貧困大国日本」の現状
本書で注目したのは、格差問題に詳しい経済学の専門家による「格差拡大中の日本」についての分析だ。
戦前の日本は「超格差社会」で「超不平等社会」だった。
敗戦後、GHQの農地解放、財閥解体などの改革により、格差は劇的に縮小した。
それから70年が過ぎ、1980年代のバブル期を経て、高額所得者の所得上昇とともに、相対的貧困率も16.1%(2012年)に増加という「貧困大国日本」になった。
私たちは、アメリカほどではないが、ヨーロッパより大きな格差のなかにいるという。
貧困については、シングルマザーの6割に続き、高齢夫婦の2割、特にひとり暮らしだと男性は4割、女性は5割が「貧困者」になる。
日本の社会保障制度の整備は不十分で、「貧しい人の多くは自分の苦しい生活をまわりに訴える機会が少ない」し、「政府の審議会などに参加する人の多くは社会の指導者なので、当事者の移行が反映されることは少ない」という構造的な問題がある。
特に深刻な格差は、「機会の不平等」。
1番目は「親の経済力に応じた子どもの教育格差」、2番目は「女性差別による機会不平等」、3番目はちょっと予想外だったが「収入の低い男性の結婚の機会不平等」。
「格差是正がなぜ進まないのか」という国民心理の分析とともに、「経済成長率は正であっても、人びとの不幸度が高まっている」現状への問題提起が貴重だ。
(橘木俊詔著/岩波新書/820円+税)
