BF120 『できそこないの男たち』

『できそこないの男たち』
分子生物学の分野では、すべての生物はメスとして発生するのは、常識なのだという。
イブはアダムの肋骨から造られたのではなく、アダムがイブから造られた。
ボーヴォワールの「人は女に生まれるのでない、女になるのだ」も、「人は男に生まれるのでない、男になるのだ」が正しい。
本書では、専門性が高い「生命の不思議」を科学史とともに、わかりやすく説明してくれる。
「Y染色体から見ても、日本人は全くといっていいほど”単一民族”ではない」という指摘も面白いが、関心がある人には読んでもらうとして、注目したのは後半だ。
2004年に日本の総人口がピークを迎え、ずっと下降していることは周知のことだが、65歳以上の高齢化率は上昇していることについて、ハカセは「男女数の差は年齢を経るほどに拡大する」と表現する。
100歳代はすでに7万人を超えたが、女性が6万人、男性は1万人だ。
「中年以降、世界は女性のものになるのである」。なるほど。
世界的にみても、ありとあらゆる国、民族、部族で「男は女よりも常に平均寿命が短い」。その理由は、歴史的、社会的なことではなく、男性は「がんになりやすく、感染症にかかりやすい」という「宿命的な弱さ」を持っているからだ。
『人口動態統計』をみると、国民の死因のトップはがんだが、女性が多くなる90~95歳は「心疾患」、95歳以上は「老衰」だ。
介護保険制度について、社会保障審議会の議論を聞いていると、生活支援の充実よりも医療への重点化を求める委員(9割が男性)が多いのは、男性のほうが医療ニーズが高いからかも知れない。
著者の意図からはずれて(おそらく)、妙に納得されられてしまった1冊。
(福岡伸一著/光文社新書/円+税)

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