BF130 『世界の家族/家族の世界』

BF130 『世界の家族/家族の世界』
作家の著者は、辺境にもよく出かけている。
著書は幅広く山のようにあり、1980年代の『インドでわしも考えた』や『ロシアにおけるニタリノフの便座について』は読んだ覚えがある。
本書は世界各地の家族の姿を集めたエッセイ集。
家族総出で聖地巡礼を果たすチベットの人びと、南米最南端の国・パタゴニアでは何年も出稼ぎに来ているガウチョたちなど、各国のつつましく暮らす人たちの喜びはなにか、豊富な写真とともに知ることができる。
どこであろうと共通するのは、食料を得て、みんなで食べる食卓だ。
大草原に暮らすモンゴル遊牧民、カナダでカリブーを捕獲し生食するイヌイット、サメ狩りをするパフアニューギニア北部、トロブリアンド諸島の人たちなど、食べ物も調理も多彩。
浮島に生活し、巨大なネズミの一種、ヌートリアを狩り主食とするパラグアイの家族には驚いた。
ヨーロッパでは、北極圏のアイルランドが紹介されている。
火山による溶岩台地がほとんどで、農業どころか林業も成立しないのに、なぜ、世界の幸福度ランキングでベストテン常連国なのか?
著者が突きとめたのは「まず原発がない。軍隊がない。警察はあっても警官たちは銃を携帯していない」ことだ。
消費税は25%になるが、その見返りとして、教育と医療は国家負担、海外での医療費も負担する。
「要するに高い税金でも、それが自分たちの生活にきちんと還元されているのだということが目に見えるのである」という分析に大いに考えさせられた。
なお、著者は「われわれ夫婦のそれぞれの両親は私たちがかなり若いころにともに亡くなっているので、今のきわめて厳しい社会現象である親の介護という責務からは解放されている」のだそうだ。
そして、「問題はこれからの自分たちが自分たちの子供たちに対して負担やストレスをかけずにどう上手に逝ってやるか、という、まあ笑いもあるけれど半ば現実的なシビアな会話をすることがある」とさりげなく語ってもいる。
(椎名誠著/新日本出版社/2000円+税)

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