BF139 『独居老人スタイル』

BF139 『独居老人スタイル』
もっと早くに紹介しようと思っていたが、ぐずぐずしているうちに、本書のトップを飾った堂々たる「ごみ屋敷老人」の秋山祐徳太子さんが亡くなってしまった。
本書は、どちらかといえば、世俗を超越した暮らしを営む16人のひとり暮らし高齢者を、豊富な写真入りで紹介する。
パフォーマンス系アーチストにスナック・ママ、画家に映画館関係者、マンガ家に道化師、民謡歌手など、20世紀に全盛期を過ごした人たちだ。
営みは多種多彩だが、まあ、全員サラリーマン生活とは無縁。
なので、年金収入は少なく、暮らしぶりはつつましく、自炊派がほとんど。
きちんと洗いあげた鍋や食器の写真をみていると、型破りな人生とまじめな食生活の取りあわせの妙を感じる。
でも、みんな介護未満だし、社会性はたっぷり持っている。
最初に特徴だと思ったのは、表現者が多いこと。
表現者と鑑賞者はセットなので、多寡はあるにしろ、来訪者がいる。
冒頭の秋山さんは、「ごみ屋敷」への来訪者は引きも切らない。
首つりというパフォーマンス(初めて知った)を続ける首くくりさんも、時折の来客に披露する。
表現者に続くのは自営業だ。輸入用品雑貨店や居酒屋を続ける人たちは客商売だから、もちろん来客がある。
福島県本宮市の映画劇場館主は、1963年以来の劇場を守っている。すでに閉館し、再開の見込みはないのだが、館内の清掃、映写機のメンテナンスを続ける。「映画館愛」というか、来客はなくても、愛する対象があるのは強い。
全裸で街を走り抜ける「ハプニング」で話題となった91歳のダダカンさんは、「なんにもしないでいられたら、それでいいんです」という。達観ですね。
本書が刊行されたのは2013年なのだそうで、亡くなった人も何人かいる。
自分らしさを貫き、老いを迎えた人たちの矜持の一端を知ることができる。
(都築響一著/ちくま文庫/1000円+税)

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