『コリーニ事件』
最初に映画『コリーニ事件』(マルコ・クロイツパイントナー監督、2019年、ドイツ)を観て驚き、原作を読んだ。
弁護士になって42日目のカスパー・ライネンは、ファブリツィオ・コリーニの国選弁護人を引き受ける。
コリーニはイタリア人だが、35年間、ドイツのダイムラー社で自動車組立工として働き、マイスターとして定年退職した
そして、ハンス・マイヤーという大企業の社長、「ドイツでもっとも裕福な男のひとり」を銃殺していた。
真面目な人生を送ってきた人間がなぜ、殺人を犯したのか。
彼は殺人は認めるが、かたくなに動機を語ろうとしない。
おまけに、被害者はなんと、ライネンの少年時代の恩人だった。
そして、遺族側にはライネンが大学時代に刑法を教わった著名な弁護士、リヒャルト・マッティンガーがつく。
なんとも不利な状況のなか、ライネンはひとつずつ事実を掘り起こしていく…。
1934年、コリーニは9歳だった。
彼の村にはドイツ軍が駐留し、パルチザン狩りが行われた。
ハンス・マイヤーは親衛隊大隊の指揮官だったが、戦争犯罪を問われることはなかった。
というのも、1968年、「秩序違反法に関する施行法」がまったく注目されることなく、国会で議論されることもなく成立し、ナチスの最高指導部のメンバー以外は「謀殺の幇助者」で、有罪にはならないとされていたのだ。
作者は弁護士であるだけでなく、祖父がナチス独裁政権の中心人物のひとりで、ニュルンベルク裁判で禁固12年の判決を受けたということにも驚く。
本作はドイツでセンセーションを巻き起こし、作中で指摘された『法律の落とし穴」については、ドイツ連邦法務省は調査委員会を立ち上げたという。
戦争犯罪ほどのスケールではないが、介護保険でも法律ではなく、施行令などで見直しが行われることが多い。
そして、「見直しの動きをほとんど気づかれることはない」という指摘をしっかり覚えておこうと思った。
(フェルディナント・フォン・シーラッハ著/東京創元社/1600円+税)
