BF168 『介護ヘルパーごたごた日記』

BF168 『介護ヘルパーごたごた日記』
のっけから余談だが、著者の「さとうしお」という名前をみたとき、早逝した少女マンガ家の佐藤史生を思い出した。「ソルティシュガー」が好きな人は多いのだろうか?
著者は広島県H市で働く登録ヘルパー。介護保険制度創設時に市のホームヘルパー講座を受けようとして、抽選に落ちた経験があるという。そんな時代があったね、と思う。
2014年、51歳で働きはじめたとき、先輩ヘルパーに同行する研修の現場でのけぞるような体験をしている。「クビ案件」なんだそうだが、読んでいるほうも驚く。
とはいえ、10年間の仕事で出会った利用者たちは、実にバラエティに富む。多いのは85歳以上でひとり暮らし、認知症の人たちだが、末期がんに身体障害、「パワハラ娘」というのもいる。
訪ねる利用者宅は「思いきり汚部屋」か「ほこりひとつない部屋」の両極で「中間が少ない」そう。
仕事で一番しんどいのは、「シモの世話」より暴言・暴力だという。
「介護現場の自己肯定感は上がったり下がったり忙しい」というさまざまなエピソードは読んでのお楽しみ。
注目したのは、登録ヘルパーの労働条件だ。提供するサービスは「やったらいけないことだらけ」のグレーゾーン。移動時間は無給で、利用者宅のトイレは使えない。家具に邪魔され無理な態勢で介助して、慢性的な腰痛に悩まされる。卵焼き(厚生労働省の定義だと「簡単な調理」か)は、甘い派、しょっぱい派、柔らかめ、固めと好みが難しいと初めて知った。
著者は先輩ヘルパーの「自己流介護」を注意できるようになりたくて、介護福祉士の資格も取った(取得したら、先輩は辞めていたそう)。
息子のひとりは重度心身障害者で、母である著者は吸引や胃ろう管理のベテランだ。医療的ケアの研修を受ければできるという自信はあるが、「看護師並みの給料がもらえるわけではない」し、「自分だけできるようになると、逆に休めなくなる」ので、「デメリットだけなのに、高額を払って研修を受ける意味がみつけられない」という。
医療的ケアをめぐっては社会保障審議会でもめていた記憶があるが、ホームヘルパーが提供していも加算はないのか!
著者の祖母は被爆者だが、証人がいなくて原爆手帳が取得できなかったそうだ。
入院して看護師に無視される姿が忘れられないという。
「あのときの看護師のようにはなるまい」と思っている著者は、「ヘルパーである私が好きだ」と書く。
著者が働き続けられること、経営危機にあるという事業所が持ち直すことを願わずにはいられない。
(佐東しお著/三五館シンシャ/1300円+税)

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