CF025 『最高の人生のみつけ方』 The Bucket List

アメリカ的ターミナル

有名な性格俳優のジャック・ニコルソン(1937年生まれ)。
毎年のように出演作があるが、60年代、一世を風靡したアメリカン・ニューシネマ『イージー・ライダー』にはじまり、精神病院が舞台の『カッコーの巣の上で』(1975年)、スティーブン・キング原作のホラー『シャイニング』(1980年)、労働組合の指導者として権力をふるった人物を演じた『ホッファ』(1992年)、行き場を失った退職サラリーマンを描いた『アバウト・シュミット』(2002年)など印象的な作品が多く、スクリーン上で齢を重ねていくのをずっと観てきたような気がする。

そんなニコルソンが、高齢ドライバーがテーマの『ドライビング Miss デイジー』(1987年)や、

「尊厳死」を描いた『ミリオンダラー・ベイビー』(2004年)のモーガン・フリーマン(ニコルソンと同い年)と組んだ本作は、終末期がテーマだ。

エドワード(ニコルソン)は、鼻持ちならない大富豪。

カーター(フリーマン)は実直一筋の自動車整備工。
まるで接点がないふたりが、入院した病室で鉢合わせ。
当然、いがみあうのだが、共に余命6ヵ月を宣告されて、「今、オレたちは(「死とその過程」の)第2段階で、怒ってるんだよな!」と奇妙な連帯感を抱く。

そして、カーターが死ぬ前にやりたかったことを書き出した「棺桶リスト」(原題)を実行すべく病院を脱走。
スカイダイビングにカーレース、飛行機をチャ―ターした破天荒な世界旅行…。

このあたりは、『死ぬまでにしたい10のこと』(イザベル・コイシェ監督、2003年)の
主人公・アン(サラ・ポーリー)が23歳で余命2ヵ月と言われて書き出した可憐なリストに比べて、いかにもおじさん的なアメリカン・ドリーム。

しかし、エドワードの資産を注ぎ込んでリストをつぶしたけれど、ふたりが着地したのは家族への愛、
そして短く濃密な時間に育んだ友情だった。

『週刊東洋経済』2010年9月11日号が「後悔しない!終末期医療」を特集し、「人生の最期は自分で決める」とサブタイトルを掲げているが、ベテラン俳優ふたりは深刻になりがちなテーマを明るくコミカルに提示してくれる。
(ロブ・ライナー監督/2007年/アメリカ/97分)


投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ: