クリスマス・イブの愛と孤独
舞台はクリスマス・イブのニューヨーク。
児童書のベテラン編集者として働くローズ(スーザン・サランドン)はケーキやプレゼントを抱え、認知症の母親が入院する病院に急ぐ。
若いニーナ(ペネロペ・クルス)は警察官のマイク(ポール・ウォーカー)とまもなく結婚する予定だが、彼の嫉妬深さにうんざりしている。
ローズは職場と病院、自宅の三点往復の毎日に疲れていた。
「イブの夜よ」と同僚にけしかけられ、年下のセクシーな男性とデートをしてみたが、まったく気乗りがしない。相手が去った後、イブの夜を散策するローズは、スペイン系一家のにぎやかなパーティーに遭遇する。そのなかに、マイクとの結婚に悩むニーナがいた。ローズはニーナの訴えにやさしく耳を傾ける。
一方、マイクはランチに入った食堂のマスター、アーティ(アラン・アーキン)にアパートまで押しかけられ、「死んだ妻の生まれ変わりだ」と言われてしまう。同性愛者に言い寄られたと勘違いしたマイクが動揺するシーンが、いかにもアメリカ的。もめた揚句に、アーティは発作を起こし、マイクは救急車に付き添う。かけつけたアーティの息子は、かつて父親が嫉妬のために母親を事故で死なせてしまい、過去に囚われ続けているのだと語る。
ニーナと別れたローズは凍てつくハドソン川の桟橋で、神の存在に疑問を持ち神父を辞めたというチャーリー(ロビン・ウィリアムズ)に出会う。ローズの願いは、アルツハイマー病が進み感情を失った母親と「1秒でもいいから」心を通わせること。「介護は報われない」と嘆くローズに、チャーリーは自分の人生を歩むことが母親の望みだろうと語る。そして、迎えたクリスマスの朝…。
アメリカは国民の8割がクリスチャンという宗教国家なので、キリスト生誕日(フランス語でノエル)は特別な1日だ。イブのさざめきのなかで、さまざまな愛を求めて孤独を深めるニューヨーカーの長い夜が綴られ、エンディングにささやかなクリスマスの奇跡がもたらされる群像劇。
(チャズ・パルミンテリ監督/2004年/アメリカ/96分)
