CF040 『再会の食卓』 Apart Together(団圓)

「飯を食うことが大切だ」
食事が重要な映画といえば、高級台湾料理が並ぶ『恋人たちの食卓』(アン・リー監督、1995年)やフレンチのフルコース『バベットの晩餐会』(ガブリエル・アクセル監督、1987年)、フィンランドで洋食の『かもめ食堂』(荻上直子監督、2006年)などを思い出すが、作り手はみなプロの調理人。
本作もまた、食事のシーンが繰り返し登場するが、メイン・ディッシュは中国と台湾に分断された初老の男ふたりの手作り料理だ。
急速な都市化が進む上海で、ユィアー(リサ・ルー)は夫・ルー(シュー・ツァイゲン)と穏やかな晩年を迎えていた。
ある日、1949年以来消息不明だった元夫・イェンシェン(リン・フォン)から、「台湾老兵帰郷団」として上海に行くという手紙が届いた。
蒋介石率いる国民党の兵士だったイェンシェンは台湾に撤退させられ、ユィアーと生き分かれになった。
子どもを抱えたユィアーは人民解放軍の兵士だったルーと再婚し、文化大革命の嵐に耐えた。
ルーは「戻って来られて良かった」と歓迎する。
だが、イェンシェンはユィアーを台湾に連れていきたい。
ユィアーもまた、「余生は愛のために生きたい」と願う。
温厚なルーは「待つ時間が長くても、短くても、飯を食うことが大切だ」と上海ガニを奮発し、2人の願いを受け入れる。
だが、当人たちは合意したものの、子どもたちは納得できない。
口論にうんざりしたルーは「お前たちは世間体が気になるんだ」と怒り、ユィアーとの離婚を宣言。
翌日、正装したルーとユィアーは離婚手続きのため役所に行く。
だが、内戦後の混乱期に式を挙げたふたりに結婚証明書はなく、「事実婚だから、離婚する必要はない」と言われてしまった…。
ルーは国民党兵士の家族との結婚で出世の道を閉ざされた。
イェンシェンは台湾で望郷の思いを抱き続けた。
誠実でやさしいふたりの男に挟まれたユィアーの気持ちは揺れる。
最後の決断をする夜、体調を崩したルーのためにイェンシェンは市場を巡り、台湾料理「スープの王様」を作った。
喜んだルーは秘蔵の酒を出し、3人はなつかしい歌をうたった。
中国と台湾に人びとが分断された悲劇、急成長する大都市・上海、進行する高齢化を遠景に、つつましい暮らしのなかで成熟した精神を持つ男女の姿を、ユーモアを交えて描いた作品。
(ワン・チュエンアン監督/2010年/中国/96分)

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