CF044 『人生、ここにあり!』  Si Puo Fare

決めるのはみなさんだ!
舞台は1983年のミラノ。
労働組合で働くネッロは熱血漢だが、急進的な主張を嫌われ、精神医療センターに併設された「協同組合180」のマネージャーに左遷になった。
そこには精神障害をもつ10人の男女が、無気力に切手貼り(市役所の委託事業)をしていた。
イタリアでは1978年、世界で初めて公立精神病院を廃止する法律「バザリア法」が公布され、病棟から解放された人たちへの社会復帰支援がはじまっていた。
「協同組合180」もそのひとつ。
精神障害はよく知らないネッロだが、はりきって組合員会議を開催。
切手貼りは失敗してもお金がもらえて楽だが、無意味な補助作業。骨は折れるが、意義があるかも知れない仕事で市場参入しないか?
ためらうメンバーを「組合は組合員のものであり、組合員とはみなさんのことだ」と励ます。
仕事になりそうなのは寄木細工。
プロ職人に頼みこんで指導を受けたが、精神障害者とわかると注文はない。
ネッロはかつてのライバルに頭を下げ、ブティックの床の内装を受注する(イタリアのファッション業界は労働組合関係者が多そうだ)。
しかし、作業期間、頼りのネッロは不在。
寄木の材料は届かず、納期が守れないと現場は大混乱。
そんななか、統合失調症でパズルが得意なルカとジージョはありあわせの廃材で床を貼っていった。
複雑な組み合わせが美しいデザインは「コンセプチュアル・アートだ!」と大好評。
仕事は順調に増えていった。
だが、ルカは安定剤の処方量が多くてすぐ無気力に。
薬は眠くなるし、記憶力も衰え、性欲を減退させる。
ネッロは組合理事長でもあるデル・ベッキオ医師に薬の半減を求めるが、「精神疾患は治らない」「彼らに普通の生活は危険だ」と拒絶される。
では、「徹底抗戦だ!」と再び組合員会議を開催。
薬を減らし自らの労働で市場に挑戦することを議決し、理事長を解任。
薬漬けに批判的なフナラン医師の協力を得て、独立した仕事場を確保し、アパートも用意。
セックスしたいメンバーの希望をかなえるため、EUのベンチャー事業支援補助金(!)も活用。
本作はイタリア北部に実在するノンチエッロ協同組合がモデル。
生協(生活協同組合)に代表される協同組合は、組合員が共同で管理運営を行う相互扶助組織。
日本でも農協や漁協、商店街から信金までさまざまな協同組合がある。
ノンチエッロ協同組合は「社会連帯協同組合」というカテゴリーで、社会的に不利な人に働く場と住む場所を確保し、社会参加を実現する目的を掲げる。
映画では「やればできるさ!」(原題)というコミカルでアップテンポな展開そのものが楽しめるが、職人の国でもあるイタリアのおおらかさ、障害を持つことの生きづらさ、社会参加が引き起こす悲劇も織り込みながら、希望を持つことの輝きを教えてくれる。
(ジュリオ・マンフレドニア監督/2008年/イタリア/111分)

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