好きで生活保護を受けるわけじゃない
カナダのサントマリ・ラモデルヌ島はとても小さな漁師町。
かつては裕福でなくとも誰もが幸せだった。
しかし、いまや漁業は衰退し、町長をはじめ住民全員が生活保護で暮らしている。
毎月、男たちは小さな郵便局に並んで生活保護費の小切手を受け取り、ひとつしかないレストランで飲んだくれ、誇りを失ったつらさをまぎらわせる。
初老のジェルマン(レイモン・ブシャール)はそんな男たちのリーダー格。
ある日、プラスチック容器工場を誘致する話が持ち上がった。
だが、医師が5年間、常駐するのが条件だ。島にはずっと医師がいない。
途方に暮れた町長は、家族と逃げ出してしまった。
ジェルマンは相棒(ピエール・コラン)とケベック州内の医師に手紙を出しまくるが、反応はゼロ。
だが、モントリオールで警察官になった町長が、交通違反と覚せい剤所持で捕まえた整形外科医のクリストファー・ルイス(デヴィッド・ブータン)を脅し、1ヵ月の条件で島に送り込んできた。
「医者をこの島にひと目惚れさせるんだ!」とジェルマンは張り切る。
クリストファーがクリケット好きと知れば、嫌がる住民たちでにわか仕込みのチームを結成。
彼が毎日、恋人にかける電話を盗聴させ、好きな料理をレストランに用意し、「魚を釣ってみたい」と言えば冷凍の大魚を釣らせる…。
小さな島をあげての大芝居は順調に進む。
だが、クリストファーが恋人と親友に裏切られ、「みんな知っていて、ウソの網を張りめぐらしていたんだ」とヤケ酒をあおるあたりから雲行きが怪しくなる。
ジェルマンは「俺たちがどんな人間かばれたら、彼はどうする?」とようやく気づいた。
しかし、島にたったひとりの銀行員・アンリ(ブノワ・ブリエール)は自分の土地を売ってまで誘致費を確保し、会社の役員もヘリコプターで視察にやってきた…。
提示されるのは過疎、医師不在、生活保護と日本にも重なるテーマだが、涙ぐましくコミカルなエピソードの数々、ささやかな幸福を取り戻すハッピーエンドで楽しませてくれる作品。
(ジャン=フランソワ・プリオ監督/2003年/カナダ/110分)
