自宅と施設を飛び出して…
時代は1960年代。
東京・浅草のレコード店でサト(みやこ蝶々)とくみ(北林谷栄)が出会う。
ふたりはお互いに「楽隠居」を装い、会話をはずませる。
路上でチンピラにからまれるが、くみのタンカに感心した昭子(十朱幸代)に声をかけられ、ふたりは昭子が働く食堂「鮒忠」で、ビールを楽しむ。
化粧品のセールスマン(木村功)と道端でよもやま話をしたり、楽しそうだが、時間はなかなか進まない。
実は、サトは狭いアパートに同居する嫁との確執にうんざりし、大量の睡眠薬を抱えて家出中。
くみもまた、社会福祉法人が運営する”養老院”でどら焼きを盗んだと疑われて、バスに飛び乗って来た。
一方、”養老院”では寮母(市原悦子)がくみの不在に気づき、園長(田村高弘)、副園長(小沢昭一)以下、警察に届けたり大騒ぎ。
お互いの境遇を告白しあったふたりは、一緒に死のうと手を取り合うが、なかなかうまくいかない…。
結局、老いたふたりは自宅と施設、それぞれの居場所に戻る。
監督みずから「老人問題は早すぎた」と言うように公開当時、興行的には不調だったそうだ。
しかし、喜劇と銘打たれているが、”養老院”に戻ったくみの誕生会にテレビ局が入り、アナウンサーの質問に「幸せです」と答える姿に、半世紀たっても変わらない「にっぽんのお婆ちゃん」をとりまく課題の普遍性を考えさせられる。
なお、”養老院”の入居者に飯田蝶子、渡辺粂子、原泉、岸輝子、東山千栄子、殿山泰司、左卜全など、栄養士は沢村貞子、巡査に渥美清、浅草の店には三木のり平、伴順三郎と往年の名演技で知られる豪華な俳優陣も楽しめる。
(今井正監督/1962年/日本/94分)
