友だちとカウンセラーのあいだ
トム(ジム・ブロードベント)とジェリー(ルース・シーン)は、仲の良い熟年カップル。
ジェリーは病院のカウンセラーで包容力に富み、地質学者のトムは料理上手で辛辣な冗談が得意だ。
春の週末、ふたりは市民菜園に出かけ、畑の準備に励む。
ロンドン市内には、庭つき一軒家。
「私たちも、もうじき歴史の一部だ」と老いを自覚しながらも、心配なのは息子・ジョー(オリヴァ―・モルトマン)が結婚しないことくらい。
満ち足りた夫婦の家には、ジェリーの職場の同僚・メアリー(レスリー・マンヴィル)がよく訪れる。
結婚に失敗して以来、振られてばかりの彼女はまだ、若いつもり。
だが、チャンスは訪れず、ワインとタバコが手放せない。
夫婦は暖かく迎え入れているが、憐れみとため息が混じる。
夏のある日、トムと幼なじみのケン(ピーター・ワイト)がやってきた。
妻に先立たれ、ひとり暮らしのケンもまた、タバコとアルコールに頼っている。
トムとジェリーは、庭でパーティーを開き、ケンとメアリーを引きあわせる。
しかし、メアリーは肥満のケンを嫌悪し、若いジョーにアプローチ。
円満夫婦は肩をすくめて、あきれ気味。
秋になり、ジョーは恋人のケイティ(カリーナ・フェルナンデス)を連れて来た。
夫婦は大喜びだが、居合わせたメアリーはあろうことかジョーの選択を非難した。
堪忍袋の緒が切れたジェリーは、メアリーと公私ともに口をきかなくなった。
そして冬、寂しさに耐え切れないメアリーが謝りに来た。
ジェリーは「自分に責任を持たなきゃ」とさとし、カウンセリングを勧める。
メアリーは「友だちのあなたがいれば大丈夫」と訴えるが、ジェリーは「専門家に頼めば、幸せになれる」と拒む…。
カップルが基本の社会で、年を重ねるとともに配偶者を失い、ひとり残される者たちのやるせない孤独を容赦なく描き出す作品。
(マイク・リー監督/2010年/イギリス/130分)
