CF068 『ナビィの恋』

おばぁの恋は海の彼方へ
舞台は沖縄本島の北西60キロに位置する粟国(あぐに)島。
ダイビングと塩で有名だ。
東金城奈々子(西田尚美)は東京の暮らしに疲れ、故郷の島に戻ってきた。
おじぃの恵達(登川誠仁)とおばぁのナビィ(平良とみ)は、奈々子の事情を問うことはなく、「いつまでもいたらいい」とやさしく包み込む。
奈々子が乗って来た船には、風来坊の青年・福之助(村上淳)とブラジル帰りの老紳士・サンラ―(平良進)が同乗していた。
恵達は毎朝、三線(さんしん)を片手に、牛の世話に出る。
彼は野宿していた福之助が気に入り、奈々子の婿になれと仕事を手伝わせる。
サンラ―のほうは謎めいていたが、なんと60年前にユタ(霊媒師)の予言によって、相思相愛のナビィとの仲を引き裂かれ、島を追い出された人物だった。
この回想シーンはモノクロ無声映画『大琉球悲恋物語』として挿入され、楽しい。
サンラ―の登場に村の人々は大騒ぎ。再びユタを頼み、「サンラ―は疫病神。ナビィがサンラ―と逃げたら東金城家は滅びるよ」と脅かされ、再追放を決める。
奈々子は祖母のロマンスを知って、びっくり仰天。
だが、おじぃの恵達はそんなナビィを妻にして、「島一番の美人と結婚できて幸せだったのさ」と淡々と語る。
一方のナビィは、「おじぃは大好き。だけど、サンラ―さんのことは忘れられない」。
二度と後悔はしたくない。季節風(新北風=ミーニシ)がやんだら、サンラ―と一緒に島を出ようと心に決めて…。
沖縄オペレッタの趣きの作品は、『島千鳥』や『十九の春』などの島唄が全編に散りばめられ、アイルランド民謡からオペラ・カルメンの『ハバネラ』までなんでもあり。
主演の平良とみは当時、79歳。
インタビューでは、「恋も忘れる年なので」ナビィ役をためらったが、周囲の特におばあちゃんたちから大歓迎されたと言う。
「昔だったら男と駆け落ちするなんて非難の的だったけど、みんな、やっぱり恋や夢があるのよ」。
介護保険がはじまる前年の作品だが、高齢者の「恋や夢」はどのくらい広がったのだろうか。
(中江裕司監督/1999年/日本/92分)

投稿日

カテゴリー:

投稿者:

タグ: