CF081 『おみおくりの作法』Still Life

死者の想いに寄りそう
44歳のジョン・メイ(エディ・マーサン)は、ロンドン市ケニントン地区の民生係。
無口で無愛想な彼の仕事は、孤独死した人を弔うこと。
主がいなくなった部屋を大家とともにチェックし、遺品から家族や友人の手掛かりを探して、葬儀の手配をする。
せめて参列者がいればと願い、必ず故人の関係者をあたるが、誰もやってくることはない。
それでも、ジョンは亡くなった人が喜びそうな音楽を選び、ていねいに弔辞を綴り、たったひとりで葬儀と公営合同墓への埋葬に立ち会う。
帰宅後は、故人の写真をていねいにアルバムに貼る。
「誰も知らなくても、僕は知ってるからね」と語りかけるかのように。
彼は22年間、現実を受け入れてあきらめる仕事を淡々と繰り返してきた。
だが、ある日、自分の真向いのアパートで、ビリー・ストークという名のアルコール中毒の男性が孤独死したという連絡が入った。
死後数カ月が経過し、異臭の苦情で発見されたという。
ジョンは、自宅の窓から見える部屋に暮らしていた人の死にショックを受けた。
さらには、解雇というダブルパンチが待っていた。
上司いわく「君は時間をかけすぎだ。弔う者がいなければ葬儀は不要だ」。
どこの国にも人員削減、効率化の波が押し寄せる。
ビリーの案件が最後の仕事になったジョンは、せめて家族や友人を探しだし、行政的にはムダな葬儀を執り行うことを決意。
遺された写真を元に、働いていたパン工場、元・恋人が営むフィッシュ&チップスの店、刑務所とイングランド中を巡って、彼の人生をたどる。
出会った人たちからもらう食べ物の数々が、なかなかユーモラス。
退職日を無給で延長し、ようやくビリーの娘・ケリー(ジョアンヌ・フロガット)がみつかった。
だが、彼女はジョンに感謝するものの、葬儀に出るとは言わない。
ロンドンに戻ったジョンは、ビリーの空軍時代の仲間やホームレスの知人たちにも声をかける。
ケリーからも参列すると連絡をもらい、いつも慎重なジョンはちょっと浮かれた挙句、とんでもない不幸に見舞われる…。
さえない中年男が主人公だと、こんな結末にするのかという気もするが、生きる者が見送る意味を静かに問う佳作。
(ウベルト・パゾリーニ監督/2013年/イギリス=イタリア/91分)

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