難病の天才科学者の人生
『ホーキング、宇宙を語る』(早川書房)で有名なスティーブン・ホーキング博士(1942年生まれ)は、天才科学者というだけでなく、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者で、電動車イスと人工音声を駆使する障害者でもある。
本作は大学院生時代に発症した博士と、彼を支えた妻ジェーンの半生を描く。
スティーブン(エディ・レッドメイン)はケンブリッジ大学の博士課程に在籍しているが、論文テーマがまだ決まらない。
学生パブで出会ったジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)はスペイン中世詩が専門で、家族そろって敬虔な英国国教会の信者だ。
科学が専門のスティーブンは無神論者だが、聡明なジェーンとあっという間に恋に落ちる。
「宇宙のすべてをエレガントなひとつの方程式で証明する」という野心を抱くスティーブンだが、指の震えや足のもつれなどALSの兆候が現れ、ついに倒れる。
「脳からの指令が筋肉に届かなくなり、思考力には影響はないが、誰にも伝えることができなくなります」、「余命は2年です」という医師の告知が切ない。
スティーブンの父親はジェーンに婚約解消を勧めるが、彼女は「私たちみんなで支えなければ」と決意を伝える。
杖が1本から2本になり、スティーブンは博士論文をクリアし、大学の特別研究員になる。
娘と息子も生まれる。
だが、車イスになったスティーブンの介助に子育てと、ジェーンの負担は膨らんでいく。
自分の論文をまとめることもできず苛立つジェーンだが、教会の合唱団を指導するジョナサンに出会う。
彼は妻を白血病で失っていて、ホーキング夫妻の息子にピアノを教えるだけでなく、介護の手伝いを申し出る。
スティーブンは「君には手伝いが必要で、誰かが協力してくれるなら、僕は反対しない」と言う。
しばらくは楽しく穏やかな日々が続くが、第3子が生まれると、ジェーンは周囲からジョナサンとの仲を疑われる。
スティーブンはジョナサンに「彼女には助けが必要だ」と語るが、肺炎を起こして入院。
ジェーンは気管切開を決断するが…。
日本のALS患者は約1万人だそうだが、映画ではホーキング夫妻の挑戦的な人生のほか、病気の進行具合、車イスの進化、音声変換技術の進歩なども教えられて興味深い。
(ジェームズ・マーシュ監督/2014年/イギリス/124分)
