CF093 『人生は小説よりも奇なり』
Love Is Strange
老いたカップルの災難と幸せ
ニューヨークのマンハッタンに暮らす画家のベン(ジョン・リスゴー)と音楽教師のジョージ(アルフレッド・モリーナ)は39年間、生活をともにしてきた同性カップル。
ある朝、ふたりはおしゃれをして、あわただしく出かけた。
ニューヨーク州で同性婚が認められ、晴れて結婚式を挙げるのだ。
親族や友人に祝福され、ふたりは幸せいっぱい。
ところが、ジョージは勤務先のカトリック系の学校を解雇された。
フェイスブックにふたりの写真が載っているのを知った司教が怒ったのだ(連邦最高裁は2015年6月、同性婚を合憲と判断したが、バチカンではフランシスコ法王が同性婚を認めようとして失敗し、いまだにタブー。日本はもちろん認めていない)。
ベンは年金生活者だし、ジョージの個人レッスンの収入では、アパートを売っても、賃貸住宅をみつけるのはたやすくない。
新婚早々、ふたりは別々に暮らさざるを得なくなり、ベンは甥のエリオット(ダーレン・バロウズ)に、ジョージは友人に助けを求めた。
ベンはエリオットの息子・ジョーイ(チャーリー・ターハン)と二段ベッドをシェア。
「みんな優しくしてくれるが、誰かと暮らすのは簡単じゃない」。
だが、エリオットの妻で小説家のケイト(マリサ・トメイ)にしてみれば、原稿書きがはかどらない。
仕事人間の夫に「隣人の騒音に文句は言えても、あなたのおじさんにうるさいなんて言えない!」と不満をぶつける。
一方のジョージは、ニューヨーク市警に勤める同性カップル宅で、夜ごと友人を招く陽気で騒々しい暮らしに疲れ気味。
ある日、我慢できなくなったジョージは大雨のなか、ずぶぬれになってベンを訪ねる…。
解雇された学校を恨まないジョージ、思春期のジョーイを助けるベン。
知的な老カップルは、ニューヨークの厳しい住宅事情に翻弄されるが、互いの愛を深く確かめる機会を得ることにもなった。
ショパンのピアノ曲を織り込み、大都会の片隅を詩情豊かに描くおしゃれな作品。
(アイラ・サックス監督/2014年/アメリカ/95分)
